Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
横浜まで行ったところで、小田急線に乗り換えた。電車の名前は、なんつったっけ…スーパービュー踊り子?とか。
『下田まではもうしばらくだよ。お昼食べたら基本的に自由だからね。周りの人に迷惑掛けない程度に騒いで良し!』
笑顔でそう言う蒼井。なんかもう及川と金田一とが騒いでるから、小学校の引率の先生みたいに見えてきた。
車内販売で昼飯を食って、それからは本当に自由だった。
『岩泉さん、隣良いですか?』
「お、おう」
及川が京谷に絡みに行ったのを機に、蒼井はいそいそと俺の隣に座った。
トンネルを幾つも越え、山の間を縫うように走る電車。その窓からは、時折海が見えた。
『なんか、窓から見える景色っていつもより綺麗に見えるんですよね』
「分かる。飛行機から見る雲とか、いつもと違ってスゲーとか思ったりしてな」
『雲海はスゴいですよね。前に飛行機から富士山の頭が見えましたよ』
「海辺を走るバスでイルカ見たことあるぞ」
『そうなんだ、いいなぁ…』
いつもと違うシチュエーション。会話もいつもより弾んだ。ぎゃーぎゃーうるさい方を見ると、及川と京谷がお菓子の争奪戦をしていた。そんな中、不意に蒼井がクスリと笑った。
「あ?」
『なんか岩泉さん、楽しそうだなぁって』
「そうか?フツーだろ」
『表情が、優しいです』
それは多分、隣に蒼井がいるからだ。
なんて、言えるはずも無く。
お前も楽しそうだぞ、と曖昧に答えた。
言ったらこの距離が変わってしまいそうで、
怖じ気ずく俺は、弱虫だ。
『あ、せっかくだし写真撮ろ』
蒼井はスマホを取り出し、窓の外へとカメラを向ける。俺もカメラを起動させ、窓の外にシャッターを向ける。パシャリ。
『あ、岩泉さんも撮りました?』
「ああ。記念に、な」
そう、部活の仲間と、そして想いを寄せる彼女との旅の記憶に。俺は撮ったばかりの写真を見て、珍しく笑った。
俺のスマホのディスプレイには、カメラを構え無邪気に笑う蒼井の姿があった。