Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
合計4時間に渡るバスの旅。あと30分くらいで東京に到着予定。
出発直後と違い、車内はとても静か。騒ぎ疲れたほとんどが、すやすやと寝息をたてていた。及川サンつまんない。そうだ、海宙ちゃんと話そう。
「海宙ちゃーん、起き…」
俺の前に座る海宙ちゃんを上から覗き込んで、言葉を失った。そこには、地上に舞い降りた天使がいたのだ。お世辞抜きで、本当に、天使。いや、女神?
だが、その女神の隣が問題。
「…なんで、狂犬ちゃん…」
そう、海宙ちゃんの隣は京谷。なんで及川サンじゃないの!?わなわなと俺が震えたその時、ガタンとバスが揺れた。その反動で海宙ちゃんの体は京谷に寄り掛かるようになったのだ。
『んぅ…』
「痛ェ…おい蒼井、起きろ」
『やだぁ、まだ寝るのぉ…』
何この子、スッゴいかわいいんだけど!?寝惚けた海宙ちゃんは京谷の肩にぐりぐりと頭を押し付けた。そしてそのまま、すぅすぅと寝息をたて出した。
「チッ、起きろよッ!」
『ふにゃあっ!?』
思いきり叫んだ京谷に、海宙ちゃんは奇声を発して飛び起きた。2人の声で、車内の全員が目を覚ましたようだった。
「あ、海宙ちゃん起きたー!」
『ん…及川、さん?おはよぉございま…』
ふわぁ、と小さなあくび。そんな仕草でさえもかわいいのだ。俺、意外と重症?
「んぁ、よく寝たわ…」
「松川お前いびきうるせェ!」
「え、マジで?」
「ところでさっきの声、ふにゃあっ!て、なんですか?」
金田一のひょんな一言に、車内はシンとなる。全員の視線が海宙ちゃんに集まり、それと同時に赤くなっていく。
『や、あれは、その、違くて、あの…///』
「…色気無かったな、さっきの」
京谷の爆弾発言。プッと、2,3人が吹き出すのが聞こえた。
『なっ…何よ!だいたい私の隣に座ってきたのは京谷でしょ!?』
「お前の隣しか空いてねェんだよ。つかそれとお前の色気の無さは関係ねーだろ」
『うっさいバカ』
「んだと、このブス!」
『…じゃあ、京谷。あんただけここで降ろそうか?いいよ、自分で宮城帰りな?』
顔は笑ってるのに声は氷のよう。乗車する男子高校生全員が察知した。海宙ちゃんに逆らってはいけない、と。