Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第16章 勘違い+片想いの結末《山口 忠》
帰り道、お菓子やらスポーツドリンクの粉やら、追加で買った洗剤なんかですっかり重くなった袋。2つ持とうとする彼女を止め、1つずつ持った。
「なんか、雨降りそうだね…」
頭上の空を、どんよりとした雲が覆う。通り雨でも降りそうだ。
『そうだね、ちょっと急ごうか』
そう言って、少し歩みを速くした。だが、それから間も無くして、雨粒がぽたりぽたりと落ちてきた。ペースはすぐに早くなり、ザーッと激しく降りだした。
『きゃー、濡れるー!』
「走ろう!」
走る度に水が跳ねて足元が濡れる。雨を防ぐものなんて無いから、ずぶ濡れだ。こんなことならさっきカサでも買うんだった。
森然高校に駆け込むと、そこにはタオルを持った潔子さんとツッキーが待機していた。
「海宙ちゃん、山口」
『た、ただいま戻りました…』
「うわ、ずぶ濡れじゃん」
「途中で降られちゃって…」
呆れるツッキーからタオルを受け取り、わしわしと頭を拭く。蒼井さんはというと、潔子さんに拭いてもらっていた。
「2人とも、お風呂入ったらどうかな。濡れたままだと、カゼひいちゃうから」
『潔子さん、そうしますね。行こ、山口君』
「うん。ツッキーありがとう!」
「山口うるさい」
俺らのやり取りを見て、クスリと笑う彼女の姿に、チクリ。胸が痛む。やっぱりツッキーのことが好きなんだなぁ。
そして、程無くして事件は起きた。
"故障中につき、立ち入り禁止!!"
「え…」
『故障中、なんだね…』
2つあるはずのお風呂。しかし、片方の扉には、何かの裏紙に右上がりの走り書きでこう書かれていたのだ。
『あ…じゃあ、山口君が先に入ってて』
「ええ、そんな!女の子優先で…」
いやいや、山口君が。カゼひくから先に入ってよ。でも、だって。あーだ、こーだ。
「あーめんどう。もう2人ともまとめて入っちゃいなよ」
そう言うのはツッキーで。潔子さんも隣で頷いた。困惑する俺らをよそに、背中を押す潔子さん。
「はい。カゼひく前に、ね」
『えっ、ちょっ、潔子さんっ、待っ…』
「えぇぇぇぇぇ…」
ピシャリと背後で閉まる扉。どうしよう…