Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第15章 ★祭りの夜に《木葉 秋紀》
【蒼井 side】
部室からは賑やかな笑い声が聞こえてくる。立ち聞きがバレる前に避難しなきゃ。でも足が棒になったみたいに動かない。ずるずると背中で滑り落ちて、そのまましゃがむ。
どうしよう。
やってしまった。
聞いてしまった。
幼馴染みの、秋紀のホンネ。
彼の本当の、心の言葉を。
驚かそうなんて思うんじゃなかった。
そりゃなんとなく分かってたよ。私も秋紀も好いてるんだろうなって。でも言えないじゃない。ずっと幼馴染みだったんだもの。今更好きですとか、なんのラブコメ。
『言えるワケ、無いじゃんか…』
抱えた膝に顔を埋めて呟く。どうしたってこの距離感じゃムリだ。近すぎて、それこそ家族みたいな。
そういえば、花火大会がどうのって聞こえたよね。それはつまり、そういうこと…?
『よっし、相談しよう!』
気持ちを切り換えすっくと立ち上がると、体育館に向かって駆け出した。今週末の花火大会に向けて、かおりんとゆっきーにアドバイスもらわなきゃ。
体育館に戻ると2人は、遅いよ~と私を出迎えた。それから部員たちを呼んでこなかったことを指摘され、慌てて戻るハメになるんだけどね。
部活後、ノート整理とかをするのに一人部室に残った。時間が無くて、相談はグループトークを使うことにした。もう日が暮れたというのに、むしむしと暑い。
一通り終わって帰ろうとすると、体育館から光が漏れているのに気付いた。ひょこっと覗くと、木兎と赤葦が残っていた。
『そろそろ帰らないの~?』
「分かってる、これで…ラストッ!」
「ハァ、やっと終わった…」
木兎のスパイク練を終え、付き合っていたあかあしはクタクタだった。タオルを渡しながら私は赤葦に苦笑した。
『お疲れさま。大変だったでしょ』
「慣れ…られないっスね。疲れます」
「ヘイヘイヘーイ、帰るぜ、2人共!」
「『なんか腹立つ』」
部活+自主練でもへたらない木兎。底無しの体力だけはスゴいね。それから、珍しく3人で帰ることになった。
「こう、シュバッとなぁ…」
『あー、インナースパイク?』
「そ!」
『木兎は肩が柔いからね。今度マッサージしたげるよ。肩凝るでしょ?』
サンキュ!と笑いながら木兎は言った。そして、不意に赤葦が言った。
『で、先輩はどこまで聞いたんスか?』
…あ、バレてる。