Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第14章 ★宵の月光《及川 徹》
【蒼井 side】
ん、ここどこだ…ああ、酔っぱらってたのか。うわぁ、あんなに酔ったの久々。見慣れない部屋、見慣れないベッド、見慣れな…及川さん!?
『えっ!?』
「え、どしたの?」
待って、待って待って待って…
誰かこの状況説明して!?
ブラウスのボタンが上から何個か外されてる。それと及川さんの手がむっ、胸に…///しかも及川さん上半身裸だし、私に馬乗りになってるし、それ以前にここどこですか!?
『お、及川さん…あの…っ///』
「あれ、記憶に無かったり…?」
『ちょっと、ぱっとしないです…』
なんでこうなったんだっけ…飲み会で、スゴく楽しくてぐでぐでになって。それから及川さんに送ってもらっ…てないね!?
そのままオモチカエリされましたね!?
ってことはここ、及川さんの家!?
つまり、食べられる直前!?
『待ってくださ…食べ、食べないで!』
「…え、今更ナニ言ってるの…?」
及川さんの顔が変わった。まるで、獲物を捕らえて逃がすまいとする、猛獣みたいな。鳶色の瞳が妖しく輝く。目が、離せない。
『お、及川さ、ん…』
「記憶無いんだっけ…じゃ、お互いにコクったところは?」
コクったところ?
コクっ…たあぁぁぁあ!?
私好きって言いましたね!?
『覚えてます…///』
まるで、つい一瞬前のことみたいに覚えてるよ。ああ、なんとなく思い出してきた。好きって言って、それから初めてキスをしたんだ。ファーストキスは好きな人の家の玄関で。なんつう、色気の無い…
なるほど、それなら今の状況にも納得がいく。それは、つまり…
『及川さんが欲情しちゃって、それで私のこと襲おうとしてるんですね!』
上体を起こして、及川さんに向き合う。及川さんは正解、とにっこり笑った。
「うん。でもさぁ…」
トンっと肩を押され、後ろに倒れる。視界いっぱいに、及川さん。顔の横には彼の手。
「海宙ってさ、無防備過ぎるね。もうちょっと危機感持ちなよ。今だってそう。職場の上司に襲われそうなんだよ?」
いつもより低い、その声に不覚にも背筋が粟立つ。ちゃん付けじゃなくて、呼び捨てだったなぁ。なんでだろう、ゾクゾクするのに、心臓がバクバク言ってる。
「覚悟…してね?」
それが合図のように、彼は私にキスの雨を降らせた。