Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第14章 ★宵の月光《及川 徹》
角度を変えて、何度も唇を合わせる。軽いリップ音が玄関に響く。
『…んっ、ふぅ…お、いかわ、さ…んぅ』
「ふっ…ん、あま…」
薄くグロスの塗られた唇。食べちゃいたくて待ち焦がれていたそれは、思っていた以上にやわくて、甘くて、蕩けて。
フレンチなキスだったはずのそれは、いつの間にか深いものへと変わっていた。閉じられた唇を舌でノックする。酸素を求めて薄く開いたそこから舌を滑り込ませる。
喉の方へと逃げようとするそれを捕まえて、自分の舌と絡ませる。
ヤバい、すっごい気持ちいい。
今までの子が、とかじゃなくて。テクニックがどうこう、とかじゃなくて。彼女が相手だというだけで、こんなにも。
『っぷは、はぁ…及川さん、キス…///』
口を離せば、真っ赤になった彼女。紅潮した頬に、俺がそうさせたんだと言う優越感がじわりと沸き出る。
「あれ、初めてだった?」
こくり、頷く彼女。マジか、あれで初めて…こいつは天然でエロい、マジで。
「じゃ付き合ったこととか…」
『無い、です…』
ですよねー!キスしたことなくて付き合ったことあるとか、それこそヘンだけど。
足取りがふわふわする彼女をとりあえずソファに座らせた。それからコップに水を汲み、飲むように渡した。
『ぷっはぁ。ふぅ、酔いが覚めた…』
「え、マジで!?」
口調も戻り、すっきりとした顔付きの彼女。これはあれか、半殺しにしておいて帰りますとか言うあれじゃ…!?
「え、帰る!?」
『なんでですか?せっかく両想いなのに?』
「っ///それは、煽ってるのかな…?」
口を手で覆い、彼女に訊く。焦った様子の俺に、彼女はクスリと笑った。カワイイ。
『どうでしょうね』
「そんなこと言うと、食べるよ~!?」
冗談めかして言った。つもりなのに、彼女は途端に赤くなって、俯いた。それから、俺のシャツをきゅっと握り、震える声で言った。
『お、及川さんになら、食べられても良い…かもしれません///』
あのねぇ、
そんなこと言ったら理性がもたないから。
「今の俺、ぶっちゃけ余裕無いからさ。初めてでも、優しくできる自信無いよ?」
『…良い、です///』
理性、ぷっつん。
彼女を横抱きに、寝室に向かう。カーテンの掛かっていない窓から覗く空には、真ん丸の月が煌めいていた。