Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第14章 ★宵の月光《及川 徹》
彼女の顔を窺うと、キョトンとしている。やっぱり急だったよね。ちょっとマズいかな…と思っていると、繋いだ手がぎゅっと握り返してきた。
『…行きます。及川さんの、おうち。一人ぼっちは、イヤです…』
一人ぼっちはイヤ。その言葉が、何故か胸につかえた。それでも、こんなに酔った子を放ってなんておけない。それこそ不貞の輩に食べられて…ってそれ、俺じゃん。
「そっか。じゃあおいでよ。汚いけど」
『ふふふ、気にしませ~ん。行きましょ?』
そう言うと、彼女は繋いだ手をぶんぶん振りながら歩き出した。こんな簡単に男にホイホイついてくようじゃ、心配だ。あとで色々教えてあげよう。
最寄り駅で降りて、10分も歩かないうちにマンションが見えてきた。防犯も割りとしっかりしてる上に隣の騒音が…なんてことも無い。良い物件だよね、ホンと。
カギを開けて、中に入れる。フラフラしてるし、危なっかしい。
「靴、脱いで、入って」
『はぁ~い』
てれ~っとした返事。クールな彼女からは想像できないような、そんな声。ヤバい、俺もたないかもしれない。そもそも家に連れてきた時点でかなりヤバいけど。
前屈みになって靴紐をほどいていると、不意に後ろから抱き付かれた。
「え、海宙ちゃん…!?」
『及川、さん…』
好きです―――
後ろから囁かれたそれは。
理性のカギをを、1つ開いた。
ガバッと振り向き、彼女を腕の中に閉じ込める。びくりと震えるのが分かった。
「どうして君は、そんなことを言うの…」
『ふぇ…?』
人が必死で手を出さないようにするにはどうすれば良いか、とか考えているときに、よくもまあぬけぬけと。
そのセリフは、俺のもんだよ。
「俺のが、ずっと好きだし…」
ほっそりとしたアゴをクイと掴み、上を向かせる。そしてそのまま、唇を重ねた。