Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第14章 ★宵の月光《及川 徹》
ガチャリとドアの音。お弁当を目の前のコンビニで買ってきたらしい影山くんは、私にペットボトルを差し出した。
「これ、待たせたお詫びです。よかったら」
『ありがとー、喉渇いてたんだよね』
受け取ったそれは、午後ティーの無糖。最近のお昼のお供だ。それにしても、私が好きなことに気付けたのは…観察眼が鋭いのね。
キャップを捻り、ごくりと喉に流し込む。すっきりとした味わい、たまらん。
『影山くん、お昼食べちゃいな』
「ウス。蒼井さんは…?」
『お弁当、あ、一緒に食べよっか?』
「ウス」
ちょうど空いてる影山くんの隣。同僚の席をお借りして、お昼…と思ったのに。
余計なのが来たよ、ホラ。
余計なのは、私の左側に立つと、ものすんごい剣幕で影山くんを睨み付けた。
「ちょっと影山、俺の海宙ちゃんに手ぇ出さないでくれる?」
「俺は別に、そんなつもりありませんけど」
右側でガタン、と立ち上がる影山くん。バチバチと火花を散らす彼ら。180を軽く越える彼らに挟まれる私の立場や、如何に。
「い、岩泉さぁん…助けてください…」
「ッチ、こっち来い!」
頭上の彼らに聞こえぬよう、ヒソヒソ声でヘルプを求める。岩泉さんは手招きをしたので、そろりそろりと脱出を謀る。しかし、だ。
「おい…」
「どこ行く気?」
ハイ、終了のお知らせですね。
てか、両サイドから腕掴まないでよ~。
両サイドからそんなに睨まないでよ~
『べべ別にぃ?どっこにも行きませんよぉ?』
「どもりすぎだ、ボゲェッ!」
『ひぃ、すいませんっ!』
なぜ、岩泉さんに怒鳴られる。
なぜ、影山くんは腕を離さない。
なぜ、及川さんは爽やかスマイル。
ああ、なんてこった。
『もおぉ、やぁだぁ…』
私の悲痛な叫びは、クーラーの効いたオフィスに響いた。