Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第13章 今を生きて《月島 蛍》
【月島 side】
なんとなく、気まずくて、病院に行くのが躊躇われる。後で行こう、明日行こうと先延ばしにしているうちに、3日も経っていた。
「ハァ…」
ソファの上に座り、足を投げ出す。無気力、何もする気になれない。
「今日は病院へ行かれないのですか?」
「ちょっと、気まずくて…」
「人生、そんな時もありますよ」
優しく微笑むと、料理長は台所へと引っ込んだ。そして、トレーの上にティーポットとティーカップを2つ持って戻ってきた。
彼が淹れてくれたお茶は、ハーブティーだった。ふわりと甘い香りが漂う。一口飲むと、やわらかな温もりが広がる。
「美味しい…」
「お嬢様も好きなハーブティーです」
一口一口を確かめるように味わう。そうか、お嬢様も好きなのか。そう思うと、とても美味しく感じられた。
「これ、お見舞いに少し持っていってもいいですか?飲ませてあげたくて」
「はいどうぞ。喜びますね」
料理長はそれは嬉しそうに笑った。
その時、プルルルルと電話が鳴った。なんだか、胸騒ぎがする。嫌な予感がする。
「はい、もしもし…」
【もしもし、蒼井さんのお宅ですか】
「そうですけど…」
切羽詰まったような、焦った声が聞こえる。
【海宙さんの容態が急変しました。すぐに病院に来てくださ…】
全部が聞こえる前に、僕は受話器を放り出していた。サイフだけを掴み、無我夢中で走る。途中でタクシーを捕まえ、飛び乗って行き先を伝えた。
嫌だ。
嫌だ、嫌だ。
あの会話が最後になるなんて、
絶体に嫌だ。
頼むから、
「生きてて…」