Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第13章 今を生きて《月島 蛍》
それから、毎日のように病室へと通った。日に日に衰弱していく彼女を見るのは、身を斬られるように辛かった。
2月になったある日、窓の外には晴れやかな空がどこまでも広がっていた。
「お嬢様、もうすぐ春だよ」
『そっか…そうなんだ…』
「菜の花が咲いて、つばめが来て、桜が舞い散る、春が来るから」
『そうだねぇ…』
どこか遠く、遠くを見詰め、彼女は呟いた。元々華奢なその体は、今や痩せ細り、彼女をより一層儚げにしていた。
『春まで、もつのかなぁ、私…』
「ちょ、何言ってんの。今にも私死にますよ、的な言い方、しないでくれる?」
本当に、心配だから。
本当に、そうなってしまいそうだから。
言霊、って言葉があるから、
ムダに心配させないでよ、ホンと。
不機嫌を露に、というか焦燥に駆られる僕を、彼女は優しい穏やかな顔付きで笑った。
『ふふっ、自分の体のことは、自分が一番知ってるんだよ。だからね、蛍…』
もう、大丈夫だよ?
にっこりと、いつもの笑顔で彼女は笑う。
「何が、大丈夫なワケ?」
『蛍…?』
「大丈夫じゃないからこうなってんだろ!」
『…っ!』
みっともなく、大声で怒鳴る。びくりと彼女が震えた。
『ごめ、なさい…』
さっきまで笑ってたのに、泣きそうになる。
ああもう、どうして。
上手く、伝わらないんだよ…
そんな顔をしてほしいんじゃない。
いつもみたいに笑って、それで
隣にいてくれれば、良いのに…
想いは、簡単なようで伝わらない。彼女を悲しませてしまった罪悪感に襲われ、僕は逃げ出すように病室をあとにした。