Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第13章 今を生きて《月島 蛍》
元々喘息もあり、肺の機能が弱かったこと。そして何より、今回の会社の破綻。馬車馬のように働いた私の体は、ボロボロだったらしい。それで、がん細胞が発生。瞬く間に転移した。
真っ白な一人用の病室の、真っ白なベッドに寝かされて、窓の外を眺める。
『空、こんなに綺麗だったんだ…』
こんな体になってみると、不思議だ。今までなんの気にもしていなかったものが、全てが美しく思えるのだ。
鳥のさえずり、木を風が揺らす音、青い空をふわりふわりと動く雲。
自然の全てが、輝いて見えた。
がらり、と音がして病室のドアが開いた。ひょろりとノッポの金髪猫っ毛頭。
『あ、蛍だ』
「蛍だ、じゃないデショ…っ!」
つかつかと歩み寄ると、バカなの…と呟きながら、蛍は私をぎゅうっと抱きしめた。その細腕のどこにそんな力があるんだ、と思うくらい、強く。
「体に違和感あったなら、教えてよ」
『いやぁ、風が長引いてると思ってさ』
失敗しちゃったね、と笑うと、でこピンされた。いや、でこピーンッだ。
「気付けなかった…」
『えっ…?』
私の肩に顔を埋める蛍。表情は分からないけれど、手を回した肩は震えていた。
「もっと早くに、気付けたら。こんなことにはなってなかった…僕が、海宙をこんなにさせたんだっ!」
『それは違うよ』
決して大きな声ではなかった。それでも、はっきりと力強く言った。
『蛍のせいじゃ、ないよ。だからね、自分のことを責めないで?』
貴方は、これっぽっちも悪くないの。
病気になるのは、仕方の無いこと。
『私の、運命、なんだよね、きっと』
それに、これからは今までより蛍と一緒にいれるんじゃないかな?いたずらっぽく笑うと、蛍の透き通った目から、雫が零れた。
「そんな運命、僕は認めたく、ない…っ!」
『ゴメンね…』
何に対しての謝罪なのか。そんなの、私にも蛍にも分からない。それでも、今は蛍を泣かせてしまった罪悪感が大きかった。今まで、蛍が泣くところを見たことがなかった。
だから余計に、悲しかった。
小さく嗚咽を漏らす蛍の背中を、私はゆっくりとさすった。まるで、子供をあやすように。