Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第13章 今を生きて《月島 蛍》
だが、半年もの間、酷使し続けた私の肉体は、悲鳴を上げていた。時々体がおかしいとは思っていた。でも、元々喘息を患っていたので、そう気にはしていなかった。
それが、文字通り、命取りになった。
あれから半年、東京都郊外の森の近くにあった別荘に住所を移した。料理長は外に家を持っている。だだっ広いあの邸は、私たちには必要なかった。
のんびりと午後の一時を過ごす。ここ最近の、お気に入り。庭に咲いた花に水を遣るのは、昔からの日課だったりする。
『わぁ、パンジーが咲いてる!蛍ー!』
「ハイハイ、聞いてますよ…」
うるさそうに顔をしかめる蛍。それでも、あちこちで咲きほこる花を見ると、その表情も幾分か和らいだ。
パンジー、ビオラ、マーガレット。
フリージア、カミツレ、アネモネ。
他にも様々な春の花が、色鮮やかに咲いている。すぅっと、空気を胸いっぱいに吸い込んだ。爽やかな空気と共に、優しい花の香りがフワリと香る。
「今年は、いつもより手が込んでるね」
時々遊びに来る別荘。住み込みで働くおばあさんからお花のことを色々教わった。その成果もあってか、初めてにしては上出来と言える庭になった。
スゴいしょ、と言おうとしたその時だった。
『蛍、スゴいで…ごっほ、げほっ、がはっ』
「ちょっと!?」
口に手を当て、体を2つ折りにして咳き込む私。いつもの喘息かと思ったけど、どうもおかしい。咳がいつまでたっても収まらない。
『けっほ、かはっ、ぉえ、っかは、げほっ』
「しっかりしなよ、大丈夫!?」
蛍が何度も背中をさすり、ようやく落ち着く。口から手を離し、蛍を向く。
「なっ、それ…っ!」
『え…ぃ、いっ、いやあぁぁぁあっ!!』
驚愕で目を見開き、絶叫する。
私の手は、鮮血で真っ赤に染まっていた。