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Volleyball Boys 《ハイキュー!!》

第13章  今を生きて《月島 蛍》




【蒼井 side】


日本でも有数の財閥、そこの一人娘。

好きな時に好きなことをできた。

ほとんどが自分の思うままだった。

………半年前までは。


"蒼井グループ、倒産です!"

"大量の損失をして…"

"会長の蒼井さんはこの事に…"

テレビから聞こえる、アナウンサーの声。慌ただしく走り回る、使用人の足音。家の電話はリロリロと着信を教え続ける。

そんな光景を、見詰めるだけの、私。目の前に起きていることが、信じられなかった。ぼけーっとソファに座ったまま、隣に立つ蛍へと声を掛けた。

『ねぇ、蛍…』

「ナニ?」

『これってさぁ、リアルなのかな…』

「その頬、つねってあげまショーカ?」

減らず口を叩いてくる、同い年の執事の蛍。その対応がいつも通りなのが、せめてもの救いだった。

蒼井グループの倒産、それは私の今までの人生、そしてこれからの人生をも引っくり返してしまう大事となった。

社長でもある父親が興した新事業。たった1つのミスから、連鎖のように次々と悪いことが起こっていった。そして、いつの間にか多額の借金と、負債がのし掛かっていた。

父親は身の回りの物を持ち、夜逃げ。

"不甲斐無い親ですまない。
お前を置いていくことを許してくれ。
元気で、生きてくれればそれでいい。
達者で。            父より"

走り書きの書き置きを見た時、思わず鼻で笑った。

『ッフ、ふふ、あははっ、あははははは!』

なんて、なんて。

バカな人だろう。

"達者で生きていてくれ"だ?そんなこと、よく書けたもんだな。そもそもはアンタの管理ミスが原因じゃない。笑っちゃう。

『蛍、この事態、私たちでどうにかするよ』

「畏まりました、お嬢様…」

正式なことではなかったけれど、父親の代わりに私が指揮をとった。

多額の負債を払い、何万人もの社員の十分な退職金を支払い、手にしていた不動産や土地など、全てを売って金にした。

ようやく事が済んだ時には、半年が経過。手元にあるのは、空っぽの邸だけ。

それと、残ってくれた心優しい料理長と執事の蛍だけだった。


    
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