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私は醒めない夢を見る

第1章 日常


「!?」
え、なにこのカップルがやるような行動。
口の中にビターチョコの味が広がる。美味しい。
「警戒心の欠片もないですね。このチョコレートがただのチョコレートではない可能性だってあるのに」
「ハバネロが入っていたらアウトでしたね。っていうかチョコ押し付けてくる先生が悪いんですよ!」
「なかなか受け取ってはくれそうになかったので。やっぱり食べましたね皆川さん」
「あっ……」
「持っていってくださいね」
先生が差し出したチョコレートを受け取る瞬間、パチリと静電気が起こる。
「うわびっくりした。五月ってまだ静電気の季節なんですね」
「…」
松野先生は無表情で自分の手を見ている。静電気嫌いなのかな。
「皆川さん、何か持ってますか?」
「何かって曖昧ですね。強いて言えばチョコレートとスマホくらいですけど」
「そうですか…まあいいです。そろそろ職員室で朝礼があるので、お菓子を持って教室へ戻ってください」
そう言うと先生はメッセージの書いてあるお菓子以外を紙袋に詰め渡してきた。それを受け取る時にもまた静電気が起こり、先生は不愉快そうに顔を歪めた。

「どうしようかな、これ」
大量のお菓子を手に途方に暮れてながら教室へ帰る。
「あれ皆川ちゃん、どーしたのそれ」
ドア付近に居た内海さんが声をかけてくる。視線は私よりお菓子だ。
「先生にもらったんだけど、こんなにあってどうすればいいのか困ってて…」
「へえ〜勝俣の奴、随分気前いいね!」
どうやら内海さんは先生の意味を文芸同好会の顧問、勝俣先生と受け取ったらしい。
「そうなの。でも、うちの同好会だけじゃ食べきれないし、良かったら好きなだけ取って」
「え!? いいの!? じゃあ遠慮なく」
内海さんにつられて、もう学校に来ていた女の子達も嬉しそうに取って行く。
「わあありがとう皆川ちゃん!」
「俺らも取っていい?」
「いいよ。いっぱいあるから」
男子達も混じってくれたおかげで、お菓子はどんどん減っていった。皆がお菓子を食べ始めたせいで、教室はなんだかお菓子パーティーみたいになっている。そうしているうちに担任の先生もやって来て、残ったお菓子は雛沢ちゃんと当麻君と私で食べきれるくらいになった。
「一限って生物?移動だったよね」
いつも一緒にいる柳田ちゃんに聞かれ、朝見た光景が蘇ってくる。
「うん、目の解剖だよ」
また松野先生に会うのか…。
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