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私は醒めない夢を見る

第2章 秘密


「先輩、ちょっとだけ我慢してくださいね。…すぐに、そいつを始末しますから」
「当麻君言い方が物騒だよ!!」
「教師に向かってその口の利き方はいかがなものかと思いますよ、当麻斎君。私を馬鹿にしてもらっては困りますね」
松野先生は私を後ろから抱きしめるような体制になった。私はあれか、やっぱり盾かなにかなの?
「先輩から離れろ、穢らわしい化け物め…!」
当麻君はさらに物騒なセリフを吐きながら、十字架を掲げた。
耳に松野先生の吐息がかかる。もしかして、笑ったのだろうか。
当麻君はあきらかに英語ではない言葉を朗々と唱え始めた。
「現代日本でラテン語が聴けるなんて、いい経験ですね」
松野先生はボソボソと私に囁いてくる。くすぐったくて身じろぎをすれば、腕の力が強くなった。
そうしている間にも、当麻君の十字架は光を放つ。その青白い光は、先ほど放たれたものと同じだ。
「くらえ、吸血鬼!」
十字架から青白い光が迸った。放たれた矢のように真っ直ぐこちらへと向かってくる。
「っ!」
反射的に目を閉じて体を固くしたけど、想像していたような衝撃はやって来ない。
目を開ければ、松野先生が私を庇うように右手で光の矢を受けていた。血がポタポタと床に垂れる。
「…なかなかですね。若くしてこれだけの力を持っていることは讃えましょう。ですがーーー」
澄んだ音を立てて、矢が砕け散る。
「夜はいいですね。造作もなくこういうことが出来るんですから」
先生の声は笑っていた。けれど、私は右手の血の方が気になってしまう。
「まだ、続けますか?」
「お前が倒れるまで、何度でも!」
「ちょっと、二人してファンタジーの胸熱展開みたいのしないで!」
私の言葉を無視して、二人はにらみ合う。松野先生は不敵な笑みを崩さずに、当麻君は険しい顔をしながら。間に私が居ること分かってるのかな……。
仕方なく腕を伸ばして、先生の右腕を押さえた。
「先生、血が出てるんですしやめて下さい。当麻君も、とにかくそれ降ろして」
いくら夜とはいえ、人が来そうな所で退魔士やら吸血鬼やらを戦わせるわけにはいかない。というか、二人ともここが学校だって分かってるの!?
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