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私は醒めない夢を見る

第1章 日常


放課後、スマホに雛沢ちゃんからLINEが来ていた。
『すみません、家の都合で今日は行けません。先輩に会いたいです!当麻君はどうでもいい』
雛沢ちゃんは当麻君に厳しい。同学年ってこんなもの? 了解と送ると、私は紙袋を持って職員室へ鍵を取りに行く。
「どうかしましたか」
職員室前で、松野先生と会った。今日はよく会う。
「部室の鍵を取りに来たんです」
「それを引き取ってくれたお礼も兼ねて取って来ますよ」
そう言うと先生は職員室へと入っていく。どうも先生が優しい。そんなに告白現場の噂を流されたくないのかな。
「どうぞ。それ随分と減っていますね。食べたわけでもないでしょうし、クラスで配りましたか?」
「ダメでしたか?」
「いえ、構いませんよ。ただ、貴女のクラスの生徒から貰ったものも多かったので」
あ、そうだったのか…。
「大丈夫ですよ。普通に食べてましたし」
「ならいいんですけど」
その時、スマホがブーブーと着信を告げる。
「ちょっとすみません」
スマホを取り出し、電話に出る。
『先輩、どこにいますか!?』
「当麻君?」
電話の相手は当麻君だった。
「今ね、鍵を取りに行ってて。すぐに部室行くから」
『そこ誰かいます?』
松野先生を見ると、私を驚いたような表情で見ていた。どうしたんだろう。
「松野先生がいるけど。鍵を取って貰って」
『……早く来てくださいね先輩』
電話が切れる。
「先生、私もう行きますね」
先生にお辞儀をして部室に向かうと、当麻君が駆け寄ってくる。
「先輩!」
「当麻君どうしたのそんな怖い顔して」
当麻君はふぅと息を吐き、小さく笑った。
「来てくれないんじゃないかって思って。電話してごめんなさい」
「大丈夫だけど、当麻君って案外寂しがり屋?」
「そ、そんなんじゃないですっ」
当麻君は私から鍵を取って、部室を開けた。
「そうそう当麻君、今日はこのお菓子食べない?」
「お菓子?」
私は紙袋を机の上でひっくり返す。
「どうしたんですか、これ」
「貰ったんだけど一人じゃ食べきれないから」
適当に誤魔化しつつ、私はうまい棒の包みを開けた。
「当麻君、うまい棒好きでしょ?」
はい、と手渡し私はグミの袋を手に取った。これ新発売のちょっとお高いやつだ。これをわざわざ買ってくれるなんて、先生モテるなぁ。
お菓子のバリエーションを楽しむ私とは裏腹に、当麻君の顔は険しいままだった。
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