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私は醒めない夢を見る

第2章 秘密


「まだ終わらないんですかね」
研修は四時くらいで終わるはずだったのに、もう五時近い。課題も終わってしまい、本格的にやることがなくなってしまった私達は、最終的に黒板に絵を描いて遊ぶという小学生みたいなことをしていた。当麻君はやたらと上手い太宰治を描いており、雛沢ちゃんは足が五本ある動物を描いていた。
「なんだよそいつ」
「アルパカ〜」
「アルパカ!?」
雛沢画伯の絵心に驚愕していると、廊下が一気にガヤガヤと騒がしくなった。
「やっと終わったのかな?」
「みたいですね。雛沢、それもう消すぞ」
「えー力作だったのにぃ」
雛沢ちゃんは消される前にスマホでアルパカを撮っていた。
「おーい終わったぞー。試し刷りやるなら早く来い」
勝俣先生は私達にそう呼びかけ、また職員室に戻る。
「じゃあ行こうか。早く終わらせて早く帰ろう?」
「はーい」
あらかじめ取ってあった原稿と荷物を持って、印刷室へ行く。途中、生物室の方へ行く松野先生の後ろ姿を当麻君がじっと見ていた。
「当麻君?」
「あ、すみません。行きましょうか」
原稿の試し刷りは、調子の悪い印刷機のせいで思ったより時間がかかった。職員室にも先生達がほとんど残っていない。
「うわっ外真っ暗」
「貴重な半休が…」
「結局いつもと変わらなかったね」
勝俣先生に鍵を返し、私達は昇降口に向かった。
「帰りにどこか寄って行く?」
「いいですね〜もちろん当麻君の奢りで!」
「雛沢テメェ…」
当麻君がそう言いかけたとき、廊下の奥から何かが聞こえた。叫び声のような、そんな声。
「?」
「なんか聞こえた…よね?」
「誰かまだ残っているんですかね? 三年生が教室で自習してたとか?」
当麻君は暗くてよく見えない廊下の奥を睨み付けている。
「当麻君どうしたの?」
「…先輩、すみませんが雛沢と先に帰っていてください」
「え!?」
当麻君は廊下の奥へと走っていった。
「どうしちゃったんでしょう当麻君…」
「なんか起こってるのかな」
当麻君の足音が聞こえなくなる。私は意を決して言った。
「雛沢ちゃん、私も見てくるよ。当麻君突っ走るところあって心配だし」
「で、でも危ないですよ先輩。なんだか嫌な予感もしますし…」
「大丈夫だよ。ちゃんと当麻君連れて、戻ってくるから待ってて」
「本当ですよ先輩…」
バッグを置いて身軽になった私は、当麻君が走っていった廊下の奥へと進んだ。
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