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私は醒めない夢を見る

第2章 秘密


得意げな勝俣先生を先頭に、私達は職員室へと向かう。職員室までは廊下を一直線に進めばいいだけなんだけど、端と端だからか案外遠い。
「先輩、半分乗っけていいですよ」
「ううん、大丈夫。なんなら雛沢ちゃんの持ってあげて」
「よろしく当麻君」
「いや、だから違うって! おい雛沢ァ!」
雛沢ちゃんが資料を乗せようとするのを、当麻君は体を捻って避けていた。二人が子犬のように戯れている様子をのほほんと見ていると、不意に腕から重さが消えた。
「ここからは僕が運びますよ」
バッと振り向くと、私がさっきまで持っていた資料を持つ松野先生が立っていた。
「松野先生じゃないですか」
「勝俣先生、仮にもテスト二週間前のこの時期に生徒を職員室に入れるつもりですか?」
「あーははは、いやぁそれは…」
テスト二週間前だったのか……。出来ればあんまり知りたくなかった。
「皆川さん達がそんなことをするはずもないですが規則ですから。ここからは僕と勝俣先生で運びましょう」
松野先生は持っていた分を勝俣先生に渡して、雛沢ちゃんの分を受け取る。
「きゃーっ! ありがとうございます松野先生〜♡」
「どういたしまして。さあそちらも」
ハートマークを飛ばして喜ぶ雛沢ちゃんとは対照的に、当麻君は険しい顔をしている。
「…ありがとうございます」
「いいえ」
松野先生と当麻君の間に、場違いなほど険悪な空気が流れる。なんなのこれ、どうすればいいの…。
「おう、お前ら戻っていいぞ。弁当持って行ってやるからな!」
空気の読めない勝俣先生の言葉で、当麻君はプイと顔を逸らす。
「…先輩、戻りましょう」
「うん、そうだね。先生、ありがとうございました」
「ありがとうございまーす♡」
自習室へ戻る当麻君の背中は、なんだか機嫌が悪いみたいに見える。
「ふふん、当麻君拗ねてますね」
「そうなの?」
雛沢ちゃんがニヤニヤしながらコソコソと話しかけて来た。
「だってそうですよ!せっかく先輩にいいところ見せたかったのに、松野先生に取られちゃいましたから」
「私に?」
「ふふふ、先輩にですよ。ねー当麻君っ!!」
後半部分で、雛沢ちゃんは当麻君背中をバシンと叩いた。
「うわっ、なんだよ雛沢!」
「このヘタレ野郎め〜」
「んな!?」
二人の言葉の応酬(?)は、勝俣先生が謝りながら幕の内弁当を持って来たことで静かになった。
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