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私は醒めない夢を見る

第2章 秘密


次の日、私は晴れやかな気分だった。だって今日は生物も無いし、職員会議があるから授業も午前中まで。先生達は勉強しろよ、というけど浮かれた生徒達がそんなことするわけがない。ほとんどの部活が休みで、校門付近はごちゃごちゃしていた。
「先輩、あそこにリア充がいますよ!」
「ほら雛沢ちゃん、指ささないの」
「働け雛沢」
「当麻君うるさい」
カチャンカチャンという音が響く。私たち文学同好会は、誰もいない自習室で職員会議の資料をホチキス留めしている。どうしてこんなことをしているのかと言うと、顧問の勝俣先生に頼まれたからだ。
勝俣先生は資料を作ったはいいもののホチキス留めまで頭が回らなかった。そこで、原稿の試し刷りをするために会議が終わるまで待たないといけない私たちに白羽の矢が立った。
「試し刷りって今日じゃなきゃダメですか?」
「印刷機が明日から点検なんだって。今日じゃなきゃ締め切りに間に合わないよ」
「…つーか、勝俣先生どこ行ったんですか」
「ほらあそこ。煙草吸ってる」
窓の外を眺めていた雛沢ちゃんが指差す方には、他の先生と一緒に談笑しながら煙草を吸う勝俣先生の姿があった。
「なんなんだよ!」
「落ち着いて当麻君。この書類は一時までに留め終わればいいし、その後は過剰注文で余っちゃった先生用の幕の内弁当食べられるんだよ」
「なんか俺たち利用されてません!?」
「当麻君うるさい」
「働け雛沢ァ!」
「やってるようるさいなあ」
書類を一枚ずつ取ってホチキスでまとめる。先生達の人数分って言われたけど、結構いるのね先生達って。
「俺の分はもう終わったんで、先輩の分もやりますね」
「大丈夫、休んでで?」
「どうせ勝俣先生も帰ってこないし、暇なんで」
「当麻君こっちもやって〜」
「お前は自分でやれよ」
パチパチと順調に作業は進み、一時前に全部ホチキス留めをすることができた。
「ギリギリお昼の時間だね」
「あー、肩痛い」
「一番仕事してない奴が何を言って…」
「当麻君うるさい」
ちょうどそのとき自習室のドアが開き、勝俣先生が入ってきた。
「おうお疲れ!いやー助かった」
「本来なら先生の仕事ですよねこれ!」
食ってかかる当麻君を諌めるように、勝俣先生はひらひらと手を振る。
「悪りぃ悪りぃ。幕の内弁当やるから、それ職員室まで持って来てくれ」
「まだ働くんですかぁ〜?」
「ドアは俺が開けてやろう!」
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