第3章 台所は女の城
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成瀬は風呂場を後にし部屋に戻る為に廊下に出た。
その途中、厠から出てきた新八と鉢合わせになった。
「あ、成瀬さん!おはようございます。」
「ああ新八か。おはよう。」
新八は成瀬に気付くなり挨拶をする。
成瀬もそれに答え、二人は部屋に向って歩き出した。
部屋に戻ればまだ眠そうに目を擦る神楽と、不機嫌そうな銀時がソファーに座っていた。
神楽は新八と同じく成瀬に気付けば、おはようと一言告げ、成瀬もそれに答え挨拶を交わした。
その後銀時に軽く視線を移すが腕を組み貧乏ゆすりまで始まっていた。
「……なぁ新八、何でアイツあんなに機嫌悪いの?」
「さあ…。僕が来た時からずっとあんなんですよ。」
新八に耳打ちをして聞くも結局理由は分からず、ふーんと興味なさげに返事をした。
「それより、朝ごはん作りますけど成瀬も一緒にどうですか?」
「んー、出来るか分からないけどやってみるよ。ご指導お願いしますよ先輩?」
「まっ、任せてください!」
二人は銀時の機嫌の事など忘れ、台所へと向かった。
台所へ着けば、新八は冷蔵庫から幾つか材料を取り出して並べて行く。
決して豊富とは言えないが、必要最低限の物は揃っている。
「何を作るんだ?」
「朝ごはんですからね、焼き魚と味噌汁くらいです。後はお米炊いてあるので、それで全部ですよ。」
魚は鮭を使い、味噌汁にはネギと豆腐のみという至ってシンプルな物。
新八は作業に入る前に、手順を大まかに説明をした。
一通り手順を聞き、成瀬はまずは手始めにと包丁を握りネギと豆腐を切っていく。
慣れない手付きで進められる作業を横で見ている新八は、指でも切らないかとヒヤヒヤしていた。
それから少々時間が掛かったものの、案外綺麗に切られていた。
「こんなので本当にいいのか?」
「上等ですよ!充分上手です!」
豆腐に関しては上手いも下手も無いが、ネギに関しては新八も驚いていた。
材料を切り終えたところで再び手順やおおよその分量などを説明しながら着々と味噌汁が完成に向かっていた。