第3章 台所は女の城
「……完成、だよな?」
「はい!成瀬さん味見してみてください!」
ようやく味噌汁が完成し、鍋からは味噌の香りを含んだ湯気がもくもくと台所に広がっていた。
成瀬はお玉で少し味噌汁を掬い、熱を冷まして口に運んだ。
「美味しい…。」
「よかった!その味噌汁は紛れも無く成瀬さんが作ったものです!ささ、魚もちゃっちゃと作って皆で朝ごはん食べましょ!」
味見をすれば予想以上の美味しさに成瀬は驚いた。
新八は成瀬に自信を持ってもらおうと、たくさんの言葉をかけた。
それからも、焼き魚の手順も新八に教えてもらい、実際に経験しながら調理をして行く。
丁寧で分かりやすい新八の説明のお陰でミスもする事なく、無事成瀬の初料理が完成した。
「新八、ありがとう。また違う料理も教えてくれ。」
「勿論です!じゃあご飯運びましょうか。」
成瀬はお椀に米を入れ、新八は出来た料理を銀時達がいる部屋へにせっせと運ぶ。
目の前にご飯が来た途端神楽のテンションは頂点まで上がり、頂きますと一言言って全員が揃うまで待たずに食べ始めた。
「あんまり急いで食べると喉に詰まっちゃうよ。」
「……うっ!!ごほっ!!」
「言わんこっちゃ無い…。はい、銀さんもどうぞ。」
「サンキューぱっつぁん。もう腹減って死にそー。」
新八は銀時に箸を渡し、それを受け取った銀時も成瀬達を待たずにご飯を食べ始める。
やれやれと新八が呆れ笑っているうちに成瀬が部屋に戻って来た。
「……もう食べてるのか。早いな。」
「これ成瀬が作ったアルか?めちゃくちゃ美味いアル!」
「はは、ありがとう。嬉しいよ。」
部屋に戻るなり初めての料理を褒められ素直に喜びを感じた。
そんな神楽の前で黙々と箸を進める銀時を見た成瀬は、口に合わなかったのかと少し不安になり、銀時に尋ねた。
「どう?美味しくない?」
成瀬がそう聞いた時、銀時は口を動かしたまま成瀬に視線を向け、言葉は発さずに箸を持った方の手で親指をグッと上げた。
その仕草のお陰で、成瀬はホッと胸を撫で下ろした。