第2章 夢と現実の境界線
何食わぬ顔でそう言った成瀬を見て三人は何とも言えない感情に襲われた。
全員の視線が同時に自分に集まり、不思議に思った成瀬はただ首を傾げる事しか出来なかった。
何かを察した銀時は、このまま問い詰めればきっと振り返りたくも無い過去を掘り返してしまうと思い、話を切り替えようと口を開いた。
「……そうか。じゃあ新八、コイツに家事教えてやってくれ。」
「え、それなら銀さんが……。」
「俺なんかよりお前が教えた方が分かりやすいだろ。」
銀時は成瀬の教育係を新八に押し付け、ソファーから立ち上がると部屋から出て行こうとした。
単純に行き先が気になった成瀬は銀時に声をかけた。
「銀時、どこ行くんだ?」
「……ちょ、呼び捨てやめてくんない?」
「何で?お前の事新八みたいにをさん付けで呼ぶのも、神楽みたいにちゃん付けで呼ぶのも私は嫌だ。なんなら坂田とでも呼ぼうか?」
「……すいません、銀時でいいです。」
また呼び捨てで呼ばれ過剰に反応してしまった銀時は、成瀬そう懇願するも受け入れてはもらえなかった。
呼び捨てにされるのは決して初めてでは無かったものの、銀時は酷く違和感を感じていた。
「それでどこ行くんだ?」
「便所だよ便所!男の子にそんな事聞くんじゃありませんっ!」
話を戻し成瀬は銀時に行き先を聞けば、何故か拗ねた様に行き先を告げ、そそくさと厠へと向かって行った。
「私何か変な事したか?」
「きっと成瀬さんみたいな美人に呼び捨てされて照れてるんですよ。」
「そうアル。成瀬、襲われないように気を付けるネ。」
「はは、そんなまさか。有り得ない。」
銀時の居なくなった部屋ではしばらく三人の話し声が響いた。
何かの話題に集中する事はなく、幅広い話題で会話は弾んだ。
その頃銀時は、不機嫌そうな顔で用を足していた。