第2章 夢と現実の境界線
予想だにしない言葉に成瀬は耳を疑い吃驚した。
その様子を隠しきれず銀時を見れば、何食わぬ顔で成瀬を見ていた。
「…それは、駄目だ。できない。」
「そんな事言わずにココに居ればいいネ!」
「せめて傷が治るまでだけでも。このまま出ていかれたら心配です。」
銀時に続きすんなりと成瀬を受け入れる新八と神楽に、何故ここまでするのかと疑問を感じた。
そんな成瀬を他所に、神楽は成瀬の腕を引き家の中へと引っ張ろうとしていた。
「ま、そうゆうこった。」
「だからそんな事は出来ない!これ以上私と居たら…!」
「人様に迷惑掛けたくないんだろ?だからここに置いてやるって言ってんだよ。ご近所さんに迷惑かけないようにな。」
成瀬はこの短時間で驚かされる事ばかりで思考が追いつかなかった。
何を言っても無駄だと分かり身体の力を抜けば、再び神楽の手に力が入りとうとう家の中まで引き戻されて行った。
「ちょっと神楽ちゃんそんなに引っ張ったら駄目だって!」
「そうだぞー。お前自身はそんな力入れてないつもりでも他人にとっちゃ生と死の狭間さ迷うんだぞー。」
「うるさいネ腐れ天パ!成瀬行くアル!」
「あっ!ちょっと待って!」
神楽の馬鹿力をからかう銀時に罵声を浴びせて部屋の奥に消えていく神楽と成瀬。
銀時と新八はその様子を玄関から見つめていた。
そのまま銀時も部屋に戻ろうと足を動かし、それに新八も着いていく。
「銀さん本当に良かったんですか?あんなに面倒事は嫌だとか言ってたくせに。」
「あぁ?此処に置こうが追い出そうがどのみち面倒だろうが。ババアに何て言われるか…。」
「はは、そうですね。」
鼻をほじりながらそう言う銀時に新八は笑った。
お登勢に罵倒されるのと、成瀬の私情に巻き込まれるのとでは明らかに後者の方が面倒事なのは明らかだったが、いつまたあんな目に遭うかも分からない女を一人野放しには出来ないという銀時なりの優しさだった。