第2章 夢と現実の境界線
成瀬は貰ったおにぎりを食べ、薬を飲むとゆっくり立ち上がった。
「大丈夫、何も無いから、悪いね看病までしてもらって。」
「あ、ちょっと成瀬さん!」
成瀬は和室から出て、ソファーに座りテレビを見る銀時の元へと足を運んだ。
「銀時、といったね。」
「!?!?」
突然呼び捨てで呼ばれ驚き振り返る銀時。
そこには申し訳なさそうな顔を浮かべた成瀬が立っていた。
何事かと思い目をぱちくりさせていると成瀬が口を開く。
「すまない、世話になった。ありがとう。」
「…は?え、ちょっ、オイ!!」
成瀬は銀時にお礼の言葉を告げ、この家を出るために玄関へと向かった。
さっきまで、何故助けただの、頼んだ覚えは無いだの、散々失礼な事を抜かしていた女の口からありがとう等と言われ、一瞬理解が出来ず固まってしまうが、自分に背中を向けて出て行こうとしている成瀬を止めようとソファーから腰を上げ追いかけた。
「ちょっとお姉さん?さっきの俺の話聞いてた?俺を犯罪者にするつもりですかコノヤロー。」
「そうじゃない。他人にこれ以上迷惑を掛けたくないだけ。」
銀時は本気で出て行こうとしている成瀬を見て戸惑った。
新八と神楽も慌てて玄関へと走って来る。
「成瀬!何処行くネ!駄目って言ってるアル!」
「今の状態で動いたらまた傷口が広がっちゃいますよ!」
必死に止める新八と神楽に成瀬は薄く笑った。
あまりにも心憂わしげな表情にその場の三人は言葉を無くした。
だが銀時はすぐに立て直し成瀬に言った。
「ここから出てってどうすんの?どうせ宛なんか無いんだろ?」
「それなら何処かで探す、心配はいらない。」
「何があったか知らないけどよ、また何かあったら死ぬぜ?運良く死ななくてもその時また誰かに迷惑かかんだろうが。」
痛い所を突かれ成瀬は言葉を詰まらせ反論が出来なくなる。
黙って俯いていると思いもよらぬ言葉が成瀬の元へ降り掛かった。
「他人にこれ以上迷惑掛けたくないならしばらくここに居ろ。何回も言うけど、俺犯罪者になりたくないし。」