第2章 夢と現実の境界線
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「何も出てかなくたっていいのに。すいません、騒がしくて。」
「そう言えば、名前何て言うアルか?」
銀時を追う新八だったが、まるで着いてくるなと言わんばかり玄関の戸をピシャリと閉められてしまい、新八はやれやれと和室へと戻っていた。
銀時の行動を代わりに謝る新八の横で神楽が女に名前を尋ねた。
「私?成瀬だよ。」
「成瀬さんですか、綺麗な名前ですね。」
新八は純粋に成瀬の名を褒めた。
成瀬は驚いた表情を浮かべたが、それも一瞬だけで次に浮かべた表情は切な気な物だった。
その顔を見て新八は何か気に障ることでも言ったのかと焦り始める。
「すっ、すいませんいきなり変な事言っちゃって!」
「ううん、綺麗な名前だなんて褒められたこと無いからちょっとびっくりしただけ。」
そう言う成瀬の顔は、二人には悲しげな物にも見えた。
しばらく沈黙が続いた後成瀬は徐ろに立ち上がろうとした。
「あっ、ちょっとまだ動かない方がっ…!」
「……っ。」
「怪我人は大人しくしてないと駄目アル!」
新八がその行動を止めようとするも、肩の痛みによって止めに入る前に成瀬は蹲った。
傷口を抑え表情を歪める成瀬を見て新八と神楽が慌てて近寄る。
「…っ。これくらいの傷なんかで情けない。」
「そんな事無いです!傷が治るまでは安静にしとかないとだめですよ!」
「そうネ!看病は私に任せるアル!」
心配する新八と神楽に成瀬は辛そうに笑いながら口を開いた。
「銀さん、だっけ?ここの主人に嫌われちゃ、ここにはもう居られないよ。」
「あの人なら大丈夫ですよ。あんな事言っててもきっと心配してますから、成瀬さんの事。」
そうは言ってもいつまでもここに居るわけにもいかないと、成瀬は無理矢理身体を動かし再び立ち上がろうと足を床に付け踏ん張った。
それを必死に止めようと新八と神楽も立ち上がる。
「おいおい、マジで死にに行くつもりか?やめてくれよ、これじゃあ俺が殺したみたいになっちまうじゃねぇか。」