第1章 Ⅰ ──無数に滲んだのは、泡沫の日───
凄い!
シンくんと同じ名前で声も似てるヒト!
急に親近感が湧いてきた。
言われた通りに目を閉じる。
「いい子だね。髪、触るよ。」
首筋の髪を掻き分けて、胸元に冷たいモノがするりと落ちてきた。
驚き目を開ける。
「何!?」
胸元を確かめると、長いネックレス?棺桶?十字架・・・?
「二重にしても、長いのか・・・。
フッ。アンタ首短いんじゃない?」
鼻で笑われた!
「まぁいいや。
御守り、外しちゃだめだからね。」
「え?でも、これ・・・」
急に辺りを見廻す月浪くん。
「そろそろ行かなくちゃ。
あ、オレはシンでいいからね。」
「シンくん・・・」
どうしても狼のシンくんが思い浮かぶ。
だから口元が緩む。
「ククッ・・・変な子だね。」
なんて言いながら頭を撫でてくれたシンくんは微笑んでいた。
その笑顔が何故か寂しそうで、声を掛けようとしたけれど『じゃあね!』と、走り去って行った。
「ん?」
校舎から視線を感じる。
・・・背筋が凍るような、そんな視線。
慌てて探すも視線の主は見つからなかった。
「誰だろう・・・。」
恐くなり急いで中庭を出た処にスバルくんが見えた。
「スバルくん!」
「ふざけんな!スバルくんじゃねぇ・・・!」
息が荒い。
「勝手に学校行きやがって・・・
探してたら気配は消えるし。」
「ごめん・・・なさい。」
必死に探してくれたであろうスバルくんに、これ以上の言葉は出てこなかった。
「次やったらぶっ飛ばす。」
スバルくんに手を引かれ歩き出す。
「・・・心配かけんじゃねぇよ。」
強く握られた手は放し方が解らない。
いつもいつも態度は悪いしすぐにお家壊すけど、スバルくんはとても面倒みがいい。妹の私が言うのだから間違いない。
他の兄達に比べると話易い。
今だって私を探す事なんてしなくてもいいのに、息が上がるくらい走りまわってくれたんだよね?
そんな優しいお兄ちゃん。
「いっぱい探し回ってくれて有難う。」
「は?別に・・・探し回ってねぇよ。」
スバルくん声が上擦ってますよ?
「そっか。」
私は綻ぶ口元を隠す
「チッ。笑ってんじゃねぇ。」
「泣いた方がいい?」
「ウゼ。」
「うぜ。」
スバルくんの真似をしてみる。
「似てねぇよ・・・ばーか。」
スバルくんがやっと笑った。