第1章 Ⅰ ──無数に滲んだのは、泡沫の日───
早目に学校に着いたらこれだよ。
妙な気配・・・だけど、懐かしいような不思議な感じ。
気配を辿り中庭へ来たてみたものの特に何もな・・・────!?
一気に思い出す。
気配・・・この匂い。
顔を見なくても解る。
何か考え事をしているのか彼女はオレに気付かない。
どっかぬけてるトコ変んないね・・・。
「ねぇ・・・アンタ。」
上げられた顔は驚きさえしているが幼さを残したままだ。
「はい!私ですか?」
「他に誰がいるの?」
彼女に近付く。
身体が強ばっているのが傍からみても解る。
オレの事忘れてるわけ?
少し屈んで顔を覗き込む。
「まさかと思ったけど、やっぱり・・・。」
そんなオレを不審に思ったのか、彼女は1歩下がった。
狼のオレしか解らないんだから仕方ないよね
仕方ない筈なんだケド・・・。
「やっぱり・・・?
あれ?その眼帯何処かで・・・」
何故か少し意地悪してみたくなった。
「あぁこれ?何処にでもある眼帯だよ。
それよりアンタ首元寂しくない?」
「やっぱり解ります?リボン忘れちゃって。」
恥ずかしそうに俯く。
の血は昔よりも美味そうで、オレを思い出す前にアイツらに構われるのも何だか釈然としないし・・・そうだ。
「ねぇ。イイモノ貸してあげるよ。」
「いいもの?ですか?」
「そうイイモノ。
その前に、その敬語止めてくんない?」
今更敬語なんか使われるの困るんだよネ。
「え?はい。
じゃあ・・・お名前教えて?」
忘れられると、こんな気持ちになるんだね。
なんだかすごくムカついてきた。
「いいから目瞑って。」
「ごめんなさい。
えっと私はです。」
ニコニコ笑っちゃって・・・
「人の話聞いてるの?・・・。」
「聞い・・・てる。」
「ん?そんな変な顔して・・・何?」
「何だか懐かしい感じがして・・・
取り敢えず名前教えて下さい。」
「・・・シン。月浪シンだよ。」
「嘘?」
そんなに驚かなくてもいいんじゃない?
「嘘つく必要ないでしょ。」
「あのね。お友達に月浪くんと声が似てて、名前も一緒で・・・」
だってオレだし。
「ハイハイ凄い偶然だね。
いい加減目、瞑ってくんない?」
狼が人間だなんて思わないか。