第1章 Ⅰ ──無数に滲んだのは、泡沫の日───
独りで、学校か・・・。
せめて初日は皆で行きたかったな。
こんな事を言ったら絶対アヤトにバカにされるだろうけど、全く校舎も教室も解らないから辛い。
誰かに聞けばなんとかなるかな?
車に揺られながら目を閉じた。
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「──ん!」
「待って!」
あれ?夢?懐かしいな。
小さい頃魔界に行ってはお父様の目を盗んで、お城の外で遊んでいたっけ・・・。
『何?こんなのでビビってんの?』
「だって速いんだもん!」
小さな私は大きな狼の背にしがみついている。
私を乗せた狼は止まることなく駆け回る。
───狼の名前は、確か・・・
「シンくん!!」
『何?』
「お外行かないの?」
狼もといシンくんの動きが止まる。
『・・・行けたら行ってるよ。』
「そっか。」
シンくんから降り、フワフワの身体を抱き締める。
「明日も明後日も、遊びに来るね!」
『全く・・・は変な子だね。フフッ。』
ぺろりと私の頬を舐めあげた。
「シンくんも変な子!」
良く遊んだなぁ。こっちに来てからは全然魔界に行ってないから・・・シンくんは今も、あそこにいるんだろうか?
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車のドアが開く音に現実へと引き戻される。
あ。学校着いたのかな?
それにしても懐かしい思い出・・・。
あれ以来シンくんには会えていない。
それにしても、あんなにいっぱい遊んでいたのに名前・・・忘れちゃうものなのかな・・・。
「有難うございます。」
と、運転手さんに頭を下げて車を後にする。
辺りを見廻す。
カナトくんが言った通り皆赤っぽいリボンつけてる・・・・・。
リボンがないと先生に怒られちゃうかな?
胸元を隠す事に集中しながら歩いていたら、中庭に来てしまった。
どれだけボーッとしてるんだと、私は頭を抱えた。
「ねぇ。アンタ。」
人が居る事にも気付かなかったらしい。
「はい!私ですか?」
「他に誰がいるのさ。」
私を呼び止めた人物が近付いてくる。
家族以外の男の人!?どう接したらいいのだろうか・・・
彼は少し屈んで私の顔を覗き込んだ。
「まさかと思ったけど、やっぱり・・・。」
え・・・『やっぱり』?