第10章 ───血塗れの首元で感じて─────
「それもあるけど・・・」
「けど?」
「今スグ八つ裂きにしたいヤツがいるから
抱き締めておいた方がいいんじゃない?」
「怖い事言わないで」
シンくんの表情は分からないケド、恐ろしい程楽しそうに喋るから強く抱き締めた。
「アンタが居てくれれば大丈夫。」
「じゃあ大丈夫だね!」
「フラフラしてて危ないから
どうだか・・・ネ。」
「そんな事ありません。」
シンくんの手が伸びてきて後頭部にまわる
「ハイハイ。寝るよ。」
そのまま引き寄せられて、眠そうな瞳と見つめ合う。
そっと瞼を閉じれば唇が重なった。
すぐに離れる唇に、まだ足りないと言ってしまいたい。
こんなんで眠れるのかな?
「おやすみ。」
「おやすみ・・・なさい。」
「・・・ホントしょうがない子。」
「えっ・・・?」
呆れられてしまったかな・・・
シンくんは立ち上がりバルコニーへ出た。
「シンくん?」
「眠れないんでしょ?
来なよ。」
私は両腕を広げて待っているシンくんに飛びつく様に抱きついた。
「あーあ。落ちちゃった。」
抱き留めてくれたシンくんと共にバルコニーから落下した
それと同時にシンくんは狼の姿になる。
「ふふっ。ふわふわ。」
ぎゅっと背中にしがみつく。
「散歩にでも行こうか。」
「有難うシンくん」
「どういたしまして
・・・落ちないでよね。」
「落とさないでね?」
「さぁね。」
「意地悪。」
気付けば山を登っていた。
「夜景綺麗だね。」
「そう?」
私はシンくんから降りた。
夜風が肌寒く感じる。
「おいで。」と袖を引かれシンくんを背に座った。
「寒くない。」
そっと鼻先にキスをする。
「この姿だと積極的だよね。」
「そうかなー?」
「そうだよ。今オレが・・・ん?」
「どうしたの?」
身体を起こしたシンくんは辺りを見回す。
「・・・オレの側から離れないで。」
「・・・うん。」
シンくんが見据えた方向からヒトが歩いて来た。
今にも飛び掛りそうな勢いでシンくんは唸っている。
「こんな時間に散歩か。」
おとこの人?
「あ、はい・・・。」
「関心しないな。
この辺りは良くない噂も多い。」