第10章 ───血塗れの首元で感じて─────
男性は徐々に距離を詰めてくる。
「良くない・・・噂?」
黒髪で整った顔立ち・・・
「ヴァンパイアが出る。」
このヒト・・・!?
男性が私に触れようと手を伸ばす。
「いや、狼か。」
「ルキ離れろ!」
シンくんは一瞬にして狼姿から戻りルキと呼んだ男性と私の間に立ちはだかった。
「そう怒るな。
頬が汚れていただけだ。」
汚れ・・・なんだろう?
───モヤモヤする。
「はぁ?いつ汚したの・・・全く。」
袖で私の頬を拭ってくれる。
「・・・わかんない。」
「ところで、こんな所で何をしている?」
「いや、こっちのセリフなんだけど?」
「変わった気配がしたから来てみただけだ。」
視線が注がれて思わずシンくんの背後に隠れた。
「まぁそうだろうね。
って言うかが怖がってるから帰ってくれない?」
「か・・・」
シンくんの舌打ちが聞こえた。
「またな。」
「あっ・・・」
「又なんてないから!」
私の返事はシンくんに掻き消された。
「興冷め。オレ達も帰るよ。」
「うん。」
帰りながら先程の男性のコトをシンくんから教わる。
元々ヒトでヴァンパイアになった・・・名は無神ルキ。
「知らないなんて、逆巻家は余程過保護みたいだネ。」
私は何も知らないんだと改めて実感した。
「知らなくても問題ないけど。」
心情が伝わったかのように言葉を続けた。
シンくんはやっぱり優しいな・・・
フカフカの背中に顔を埋める。
「ちょっと、寝る気でしょ?」
「んー?」
安心する。
「聞いてる?」
「もふもふで気持ちいいなぁって」
「聞いてないよね?」
「思って・・・ずっと一緒って・・・
幸せだな・・・って・・・」
「・・・」
「う・・・ん・・・」
「本当にこの姿のオレには積極的だよネ。
・・・おやすみ。」