第3章 心臓に流れる紅い確執
誰かの優しい手が私の髪を撫でる
シュウ?
手の動きは止まり、それ以上私を撫でる事はなかった
「ねぇアンタ。
いい加減起きてくれない?」
耳元で聞き覚えのある声がする
まだ寝ていたい..目を開けたくない。
応えずにいると溜息が聞こえ、その主は私の背中に腕をまわし抱き寄せた。
何で私を抱き締めたのか解らない
だけど、懐かしい匂いに身体は拒む事をしなかった。
「ちょっと!少しは反応しなよ。
意味が解らないんだけど・・・。」
私を起こそうとしているのは、もしかしてシンくん?
・・・流石に目が覚めた。
「シンくん....?」
私は焦ってシンくんの腕から逃れようともがく。
「あたり。
残念だねーシュウじゃなくて。」
思わず顔を上げてシンくんを見る。
「シュウ?・・・何で?」
「さぁね。
自分で考えればいいんじゃないの?」
言いながらシンくんは起き上がり、私にも起きるように促す
「起きるけど、ここはどこ?」
「兄さんとオレの家だけど?」
「なんで・・・」
そうだ...私知らない人にキスされて・・・吸血されたんだった。
「何でって・・・なにアンタ
泣きそうな顔しちゃって
まぁ、どうでもいいけど・・・付いてきて。」
恐い・・・帰りたい。
お家に帰りたい。
皆に会いたい。
歩き出さない私を見たシンくんは、舌打ちをして私を抱き上げた
「なに!?」
「暴れんなよ!
こうでもしないと、アンタ動かないだろうし」
フワリと懐かしい匂いが香る
「ねぇシンくん昔───。」
私の言葉はシンくんに遮られた。
「黙って
始祖王の前だよ。」
重そうな扉の前に降ろされると、扉がひとりでに開いた
それと同時に、昨日の出来事が瞬時に蘇る。
この人は私の血を・・・
咄嗟にシンくんの背後に隠れてしまった
「連れてきたよ兄さん。」
兄さん?シンくんのお兄さん・・・なの?
「失礼な事しないでよね。」
と、シンくんに押されお兄さんの前に膝をつく
「痛ッ..」
「遅かったな。・・・立て女。」
又吸血されてしまうんじゃないかという恐怖が私を動かした
「はい。」
『貴様・・・何故始祖の血が流れている?』
始祖の血?さっきシンくんも<始祖王の前だ>って言ってたけど、どういう事だろう?
「いえ。私はヴァンパイアです。」