第2章 僅かに見えた希望の鼓動 咎色の雲へと
「んん・・・。」
霞む目を擦り部屋を見渡す。
シュウの部屋・・・?
意識がはっきりするにつれて、シュウの香りに包まれている事に気付く。
そして何があったかを鮮明に思い出す。
だけどシュウの寝顔を眺めていると、複雑な思いが私を支配する。
一緒に居ると安心するのに今日見たシュウは、私の知らないシュウだった。
私が怪我したから?血を流したから?
その度にシュウは・・・いや、兄達はあんなに辛そうな顔を・・・思いをするの?
そんなのずっと・・・ずっと苦しいに決まってる。
私は何も知らないまま生きてきて、何も解らせない様に育ててもらって、そんな彼等の苦労は想像を遥かに超えるだろう。
何も知ろうとしなかった私。
至極当然の摂理を私は記憶から抹消していたのかもしれない
彼等の優しさと、思いやりに甘えて。
それなのに私は勝手に忘れて勝手に傷ついて自業自得だ。
そう考えると自分の存在がとても恥ずかしく感思える。
いっそこのまま消えてしまえばいいのに。
私でさえ私を要らないのに、そんな奴にこの家にいる権利は無い。
皆色々な想いを抱えて葛藤している。
そんな中私の存在は、何になる?何にもならないよね?迷惑なだけだよね。
ねぇお父様?願わくば彼等から・・・兄達から私の記憶を消して下さい。
厄介な私という存在を・・・
この痛みや思い出は私が大切にするから・・・だから・・・
・・・お父様に会いに行こう。
都合の良い事に今私の気配は消えているから、誰にもバレずに家から出られる筈。
ベッドから起き上がる。
少しだけ笑ってしまう。
だってシュウが私を暖めるようにして寝ていたんだもの。
面倒くさがりのシュウが・・・。
私に掛かっていたブランケットをシュウに掛ける。
いつもいつも有難う。
立ち上がろうとするとシャツを引かれた。
「あぁもう・・・本当に・・・」
優しいお兄ちゃんだなぁ。
少しでも<恐い>なんて思ってごめんなさい。
怠惰で寝てばかりだけど、いつも一緒にレイジさんに怒られてくれたよね。
シュウが起きない様にそっと服から指を解かし、部屋を出る。
その足で地下へ向かう。
お父様の処に続く地下の扉の前には、
────レイジさんが居た。