第2章 僅かに見えた希望の鼓動 咎色の雲へと
眠い・・・。
アイツ本当にここにいるのか?
全く気配が感じられない。
レイジの言う事を間に受けたオレも悪いが、こんな事なら使い魔にでも見張らせておくんだった。
「めんどくさ・・・。」
だるくなりその場に腰を下ろす。
眠ろうと瞼を閉じたところで、美味そうな匂いが漂ってきた事に気付いた。
階段を見上げる。
匂いの元がこちらに近付いてくるのが解る。
こんなに美味そうな匂いは・・・絶対────
確認するまでもない相手の腕を掴む。
「シュウ良かった。保健室行きたいの。」
・・・良いワケないだろ最悪だ。
怪我なんかして<喰って下さい>って言ってるようなもんだ。
こんな処に置いて行く訳にはいかないだろ。
メンドクサイがスバルが同じ教室でもだ。
「このまま帰る。」
「えっ・・・どうして?」
無理矢理腕を掴んで歩き出す。
「ねぇ。」
「シュウ・・・」
「・・・うるさい。」
何も解っていないコイツに苛立ちを覚える。
「──っ!!」
腕を掴む手に力が入る。
「シュウ濡れちゃうよ!」
あぁ雨か・・・
「ねぇ!聞いてる!?」
そんな事はどうだっていい。
「シュウ・・・恐い。」
恐・・・い・・・?
立ち止まると同時に腕を振り払われた。
は?
少し力を緩めたかもしれないが、常人の握力より遥かに上回る。
・・・やっぱり始祖の血は厄介だな。
俯いたその瞳は何を思うのか・・・
思わず溜息が零れた。
「・・・どうしても帰りたくないんだな?」
見せてやれば帰るだろ。
「そう言うわけじゃ・・・」
「なら黙って見てなよ。」
「え?」
都合の良い事にニンゲンが傘をさして歩いている。
近付き名も知らぬ女の首筋に牙をたてる。
「まっず。」
少し口に含み吐き出す。
飲めたもんじゃない。
女は驚きと痛みで声も出さずに倒れた。
今更必要もない傘をさしの元へと戻る。
「これで解っただろ?」
「何で・・・」
あんたの血にあてられた。って言ったらどうする?
でも、あんたはイモウトだから────。
オレの腕の中で永遠に守ってはやれないから・・・
せめて今だけは、
「...。」
意識のないを、そっと抱きしめた。