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【テニスの王子様】白のコルチカム

第2章 白夜


 チラリと時計をみやり、そろそろコートに出なきゃと他人事のように思っていると、

「そろそろ練習始まる時間やでー」

 数分前に慌てふためいてここを出た人間とは思えないほど、堂々とした白石がドアを開けて戻ってきた。
 白石の声を聞いた途端、財前を除く部員たちが素早く白石に振り返った。
 ただ素早いだけではない。
 まるで事前に示し合わせたかのように、同じタイミングで振り返ったのだ。
 あまりに統率のとれた動きに「うおっ」と仰け反った白石が、財前、謙也、ユウジ、小春の順番で顔を見比べ始めた。

「白石、良かったな…!」
「えっ、何が?」

 息子の成長を見守る母親のような口調で微笑む謙也に、眉間にシワを作る白石。
 財前には本気で「何が?」と言っているようにしか見えないが、謙也はそうは受け取らなかったらしい。
 傍まで駆け寄って、一方的に白石の肩を組んだ。

「隠さんでもええって。アカンことでもないし、俺らそんなんペラペラ喋らへんし」
「いやだから…何が?」
「「「えっ?」」」

 口調がからかい気味になりつつあった謙也だったが、若干鬱陶しそうにしている白石に少しずつ声が小さくなっていく。
 少し離れた位置から見ていた一氏と小春も、鳩が豆鉄砲を食らったような顔を並べていた。

「え、何って…好きな子できたんちゃうん?」

 引きつった笑みを顔に貼り付けて聞く謙也。
 頼むからそうだと言ってくれと言わんばかりに聞いても、白石はまるで心当たりがないと言うように

「いや、できてへんけど?」

 と、あっけらかんとした口調でキッパリと答えた。
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