第2章 白夜
白石が。
女子と。
喋っとう。
しかも何か楽しそうに!
っていうか、お前が好きなん花っちゅうか毒草やん!!
頭の中だけでマシンガンみたいにポンポンとツッコミを入れていると、その日の謙也の朝休みは終わったらしい。
「間違いない…アレは恋や! 白石にもついに春が来たんやで! 財前!」
「…単に連絡事項とかがあって、その延長で世間話しとっただけでしょ」
少なくとも現段階で謙也の言うようなものではないことは、断言できる。
確かに白石とそこまで普通に話している女子は珍しいが、それを恋と呼ぶにしてはちょっとゲスト扱いしすぎのような気がするからだ。
『俺は好きになった子には自分からガンガンいきたいタイプなんですぅー』
とか何とか言っていた男が恋をしていたら、話題が植物に関することになった時点で自分の好きな毒草のウンチクを延々垂れて、知的アピールでもしていないとおかしい。
小夜の方だって『ホンマに誰にでも分け隔てなくて、ええ人やなぁ』なんて、一点の曇りもない憧れの眼差しを帯びながら話していたし。
…と。まぁ、それなりの根拠があって否定したのだが、謙也の方は納得がいかなかったらしい。
財前が後ずさるのにも構わず、また一段と顔をずずいと近付けてくる。
「いーや! 白石に…ナンパも出来へん、逆ナンも苦手で言い寄ってくる女子も一人であしらわれへん白石に限ってそれはない! 間違いなく恋や!」
「男女で仲良さげに喋っとったら恋て小学生かアンタ!」
何が何でも恋にこじつけたいらしい謙也と、そうではない財前が言い争っていると、しばらく意識からそれていた部室の扉から人気がする。
「うっさいねんケンヤ! 外まで声聞こえとったわ」
「おはよぉ。謙也くんに光~。今日もエエ男やわぁ」
ガチャリと音がしたと思ったら、一氏と小春が仲良く肩を並べて部室に入って来たのだ。
小春の何気ないセクハラ的発言には財前が「キモいっすわ」とナイフを放ったところで、一氏が話の軌道を元に戻す。
「ほんで? 何でそんな騒いどってん」
「あ、せや…聞いてくれユウジ、小春…! あんな、最近仲ええ女子が居ってな…好きなんかもしれへん」