• テキストサイズ

【テニスの王子様】白のコルチカム

第1章 朧月夜


「あの、前から高野のこと…す、好きやってん…」

 誰がどう聞いても、間違えようのない愛の告白。
 照れくさそうに鼻を人差し指で擦り、つっかえながらも思いを告げる森くん。
 告白された高野小夜は口元を抑え、元々パッチリとした大きな目を、更に大きく見開いた。
 
「せっ、せやからな…俺と…つっ、つっ、付き合うて下さい!」

 森くんが、頭を下げてそう言った瞬間だった。
 ワンオクターブ上がった声で紡がれた甘ったるい言葉に、鳥肌が立ったのは。
 彼女には伏せている顔に浮かべた顔が、段々と醜く歪んでいったのが見えたのは。
 忘れかけていた嫌な予感が黒い霧のように現れ、どんどん濃くなっていく。
 比例するように、下卑た笑いを浮かべたままの森くんが、少しずつ顔を上げた。

頭上げんな。それ以上何も言うな。せめて黙って友達んとこ帰れ

 再び彼女に向けられるであろう森くんの表情、そして次に出てくるであろうセリフが容易に浮かんで、そう願わずにはいられない。
 白石が「やめぇや」と立ち上がるよりも早く。聞きたくない言葉を聞く瞬間が、訪れた。

「…って、そんな訳ないやないかーーーい!!」

 刹那の間に、教室から空気という空気が消えたかのような静けさが訪れた。
 しかし次の瞬間、そんな森くんを称えるように、教室のあちこちから、笑い声や拍手喝采がドッと噴き出る。
 校長のギャグと同じくらい…いや、下手をすればそれ以上の盛り上がりようだった。

「めっちゃウケるー!」
「何や森! 今日は珍しく冴えとるやんけ!」
「最近で一番わろたわー」

 彼女に一瞥もやらずに帰って来た森くんを、戦場から帰ってきた英雄のように称える彼の仲間たち。
 下劣とも言える笑い声が、嫌にヒートアップした空間の熱をさらに上昇させていく。
/ 70ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp