第3章 帰路
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バタバタとうるさく響く飛行機の羽音で私は目覚めた。
あつし「お目覚めかな。シャドウ」
…ああ。こいつの姿を見たら全部思い出した。
今ここに私がいるということは彼等は あつしの力に屈服したということだろう。
「最悪の目覚めだ。吐き気はするし、初めて失敗をしたことへの羞恥、それに…」
初めて男の人に抱きしめられたり、頭を撫でられたことへの嬉しさと屈辱…
なんて、言えるわけないな。
あつし「…?」
あつしの表情を横目でみると 相変わらずヘラヘラっとしている。
私はなんでこんな奴に一度も勝てないのだろう。
小さい頃からこいつには敵わない。
いや、でもこいつだけじゃない。さっきだって松野ファミリーの5人に追い詰められてしまった。
結局、男としては育てられても女としての能力しか持てないのかな…
「はぁぁぁぁ…悔しいなぁ、あつしくん。」
あつし「ははは、君の考えてることはよぉ〜く分かったよ。…でもね僕には君に勝てない部分があるんだよ。」
「またまたぁ…強者はいいね。そんだけ余裕があるなんてさ。」
あつし「余裕なんてないよ。」
そう言うと彼は私の上に乗っかってきた。
そして熱い視線を私に送ってきた。
「……やっぱりお前はそう言う目で俺を見てたんだね。」
あつし「やっぱりって何?こうしたのは初めてさ。
…あと、僕は君が女の子だって知ってるから口調は戻しなよ。
…あとね…」
何を言うのだろうと首を傾げると、
あつし「今日の夜、君のハジメテをいただく。」
彼はそう言い残し私の上から去り
私の向かい側の席へと座った。
ハジメテか…
絶対こんな奴に私のハジメテは奪わせない。
帰路、私は今夜のための対策を練りながら
飛行機の中で仮眠をとった。