第1章 溺れる私
そういう風に考えてくると、どうしても自分の中の有るかも分からない良心とやら苦しくなるわけで…。
あぁ、もう…。
「たまにだったら行ってもいい…かも。」
なんとなく恥ずかしくて小さな声で呟く。
…これじゃあ聞こえないか?
なんて思ったのもつかの間。私の視界いっぱいに赤い髪が広がって、ドッと上半身に重みが加わった。
「香織ちゃんありがとーう!!」
「ちょっと…、重っ、う…。」
江ちゃんの背中を何度か叩いていると、教室の入り口で優しげな声が江ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
中々私から離れない江ちゃんは、その声が聞こえていないらしく。私の上半身にもたれかかってキャーキャー騒いでいる。
すると今度は、聞きなれた少し高めの声が響く。
そこでやっと気づいたらしい江ちゃんはバッと入口を振り返ると、私の手を無理やりとって椅子からひっぺがした。
「…ッちょっと!?」
「丁度水泳部の皆が来てるんだから、香織ちゃんのこと紹介しなきゃでしょ!!」
「うそん!?」
心の準備がッ…と言う前に、江ちゃんに教室の入り口まで連れてこられていた。
ほとんど見下ろされる形でとても居心地が悪い…
うぅ…。
なるべく目を合わさない様に下を見てみるも、腰から下しか見えない…足長いなぁ…おい…。
なんて要らぬことを考えていると、上から優しげな声が降ってきた。
「江ちゃん…、その子は?」
「はい!! 実はですね、この子マネージャーになってくれるそうで…!!」
ん!?
マネージャーになるなんて言ったっけ!?
勢いで江ちゃんの顔を見ると、その目はらんらんと輝いていて……うん、コレ話聞いてないやつだ…。
「そうだったんだ。」
優しい声色が再びぽつり。と落ちてきた。
見上げると、私の周りに立っている人よりも一際大きい茶髪の…真琴先輩が少し腰をかがめて私を見ていた。
「俺、橘真琴。一応部長ね。」
そういってほほ笑むと、最後によろしく。と付け加えられた。慌てて自分の居住まいを正して頭を下げる。
「私は、江ちゃんと同じクラスの石田香織です。何かお力になれたらなぁ…と。…微力ですが」
最後の方はほとんど尻切れトンボ状態の私に、遠慮なく金髪の子が吹き出した。
「僕は、葉月渚ね!そんで、こっちが怜ちゃん!」