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【Free!】 溺れる君 【橘真琴】

第1章 溺れる私


「ちょっ!渚くん‼︎ 怜ちゃんって呼ばないでください‼︎ …改めて、竜ケ崎怜です。」

渚くんが少し身を乗り出してきたことに驚いて私が数歩下がる。それを気にも止めない様子の渚くんの後ろで怜くんが小さく頭を下げた。
渚くんはともかく。怜くんでっかいなぁ…同い年のくせに。羨ましいぞ、おい。

「俺は、七瀬遥だ。」

密かに怜くんに嫉妬の眼差しを送っていた横で、今度は遥先輩が軽く頭を下げる。
…思わず見惚れちゃう美形さんだなぁ…
つい、じーっと綺麗に揺れている目を見つめてしまう。すると、気まずくなってか遥先輩にふぃっと目を逸らされてしまった。

「全員の紹介は済んだかな。改めて、水泳部にようこそ、香織ちゃん。」

最後に爽やかな笑顔を受けて、少しだけ心臓の音が大きくなった気がした。
イケメンの破壊力パネェなぁ。とか思ってるところに江ちゃんの突進が炸裂して、それどころじゃなくなったのは言うまでもない。

「あ、そうだ。今日からってお願いしてもいーかな?」

水泳部の面々が帰った後で、江ちゃんがこっそりと尋ねてくる。
んー、と小さくうなった所でささやかながらさっきの仕返しでもしとこう。なんて思いついて腕を組んだ。

「どっかの誰かさんに、いつの間にか、マネージャーにされちゃったからなぁー」

わざと所々を強調して言うと、江ちゃんの顔がサッと青くなるのが見えた。
ダメなの…?
と言わんばかりの…捨てられた子犬のような瞳で見上げてくる江ちゃんの顔をみて今度は苦笑を返しておいた。

「いーよ、別に。いっつも放課後暇だったしー?」

途端に、周りに花が咲きそうなくらいの笑顔を浮かべた江ちゃんの頭を何度か撫でる。
チャイムが鳴って、江ちゃんが席に帰ると、続いて私も自分の席に腰を下ろした。

一番窓側の一番後ろの席からは、少し前までは汚かったのに、今は見違える程綺麗になって、水まで張ってあるプールが見える。
太陽が反射して、輝く水面を見ながら放課後はどうしたものか…と頭を悩ませた。
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