第6章 エースの帰還
「な、なんで旭と野村先生が…?」
「すぐそこで見かけて声をかけたの。バレー部のジャージを着てたから、もしかして東峰君かなと思って…余計なお世話だった…?」
「いや、全然っ!」
孝支君はそう言って私の肩をがしりと掴んだ。驚いて「ひゃっ」と声を上げた私に、とびきりの笑顔で応える。
「サンキュ!!みなみさんっ!!」
「えっ、ど、どういたしまして…」
「んじゃ、野村先生はそっちの端っこで見てるべ。ボール飛んでくるから気を付けて」
そう言って孝支君は得点ボードの横を指差し、烏養さんのもとへと駆けて行く。
(び…びっくりした…)
急に掴まれるんだもの…。ドキドキする胸を抑えながら、私は改めて集まった顔ぶれを見渡した。
体育館にはすでに町内会チームのメンバーが顔を揃えていた。先に来ていた武田先生も、向こうで何やら会話をしている。おおまかなチーム分けとポジションの確認をしているようで、清水さんが一人ひとりにゼッケンを手渡していた。
烏養さんが部員の顔と名簿を照らし合わせている。東峰君は、人数の関係で町内会側のチームに入ったみたいだ。
その中に、初めて見る小柄な選手が一人いた。ネットを挟んで田中君や縁下君たちと仲良さそうに話しているあたり、多分あれが孝支君の言っていた西谷君なのかもしれない。
日向君と同じくらい…もしかしたら、もう少し小さいかも…。想像していたよりもずっと小柄な生徒で、少し驚く。
「うしっ、あとはセッターだな…」
烏養さんが名簿をトントンと指で叩く。
「じゃあセッターひとり、こっちの町内会チームに入ってくれるか?」
その瞬間、ピリリとその場の空気が変わるのを感じた。孝支君と影山君がそっと視線を交わし、孝支君が静かに手を上げる。
「烏養さん、俺入ります」
「おう、じゃ頼むわ」
早速ゼッケンに腕を通して準備に取り掛かる孝支君に、影山君が進み出た。
「菅原さん…。俺に譲る、とかじゃないですよね」
「え?」
驚いた孝支君が顔を上げる。
「菅原さんがひいて俺が繰り上げみたいの、ゴメンですよ」
「………」