第6章 エースの帰還
学校に戻って教頭先生の用事を済ませ、私は急いで体育館へ向かった。
渡り廊下へ出ると、体育館の入り口の少し手前で、躊躇うように行ったり来たりしている男性がいる。
(誰だろう…?)
顎髭に茶色い長髪を後ろで束ねた、かなり長身の男の人だ。
「あの…父兄用の入り口でしたらご案内しますけど…?」
「わわっ…」
声をかけると、その人は二、三歩後ずさってから私を見た。
「あ、えと…すっ、すみません…!」
「あっ、もしかして烏養さんが呼んでくださったOBの方でしょうか…?」
「あ、いえ、俺は…現役で部員というか、元部員というか…」
「え…?」
言われて気付いた。彼が着ているのは、あの男子バレー部の黒いジャージだ。
(もしかして…)
「あなた…東峰旭君…?」
「え、なんで俺の名前…」
「やっぱり…!菅原君から聞いてたの。良かった、バレー部に戻ってきてくれたんだ…!」
「い、いや、そういうわけじゃ…」
「とにかく、今日は烏養さんがチーム戦をするって言ってたから急いで!もう始まってるかも!」
その手を引こうとした時、体育館の窓から日向君が顔を出した。
「あっ、旭さんだ!みなみ先生もっ!」
それに続いて、孝支君と田中君、それからさっき坂ノ下商店で会ったばかりの烏養さんが顔を出す。
「旭!」
「旭さんっ!!」
「おぉ、野村先生!ちょうど練習試合始まるとこだ、見てくかー?」
「はい、今行きます!」
それから烏養さんは私の隣にいた東峰君に気付き、目を釣り上げる。目が合った東峰君は、ビクリと肩を震わせた。
「んん?何だ遅刻か!?舐めてんのか!?始まってんぞ!!」
「す、すみませんっ…」
東峰君は持っていたバレーシューズに履き替え、体育館に入る。私が後を追って体育館に入ると、孝支君が駆け寄ってきた。驚いた様子で私と東峰君を見比べる。