第6章 エースの帰還
「あの、私でお手伝いできることならお手伝いさせてください…!」
ペコリとお辞儀をした私を見て、武田先生は驚く。
「えっ!?あぁ、いえ、これは僕が勝手にやってることですし…」
「いえ、この前の青城との練習試合を見てて思ったんです。みんなすごく頑張っているし、彼らのために何かできれば、って…。それにあの練習試合ができたのは、その機会を作ってくれた武田先生のお陰だって…。私、副顧問という立場ですけど、もっと関わりたいんです」
新米教師だし、仕事にも手一杯で余裕もないけど、それでもサポートできるところは手伝いたい。それが伝わったのか、黙って聞いていた武田先生は、思い直したように真剣な表情になった。
「…ありがとうございます。なるべく野村先生には負担をかけないようにと思っていたのですが、無用な心配だったかもしれませんね」
ごほん、と咳払いをして武田先生は続けた。
「野村先生には正式に決まってからお話しようと思っていたんですけど…実は、バレー部のコーチをお願いしようと考えている人がいるんです」
「コーチ、ですか…?」
「はい。コーチ無しでも試合に出られないことはないんですが、素人の僕なんかよりも、きちんとした指導者にお願いした方が、彼らにとっても有益だと思うんです。…とはいえ、何度お願いしてもなかなか了承してもらえないんですが…」
言われてから気付いた。ここ数日、武田先生が放課後にどこかへ出掛けたり、何度も誰かと電話で話していたのはそれだったんだ。
私を心配してくれていたのはありがたいけど、部活の事に関われないのは少し悔しくもあった。できることなら、私だって力になりたい。
「…あの、よければ私も同行させてもらえませんか?」
「えぇ、野村先生が良ければ!」
武田先生は笑顔で頷いたあと、すぐに顔を曇らせる。
「…ただ、なにぶんアポを取ってないので、行ったとしても門前払いになるかもしれませんよ?何度も断られているし、僕厄介者扱いされてるし…」
「大丈夫です。お邪魔じゃなければ、ですけど…」
「いえ、野村先生が一緒に来てくれるなら心強いです。明日、もう一度お願いに行くつもりだったんですが、野村先生さえ良ければ、同行してもらえますか?」
「はい!ぜひお願いします!!」