第6章 エースの帰還
「そんなこと…!」
言いかけたところで、俺の言葉は廊下から割りこんできた声に遮られる。
「おーい東峰!進路相談お前の番だぞ〜」
おう、と旭が答え、もう一度俺の方を見て微笑んだ。
「じゃ、悪いなスガ。俺、もう行くわ」
「おいっ…」
俺が引き止めるのを拒絶するように、旭がくるりと背を向けて教室を出て行く。
「待てよ、旭っ!!」
旭が俺や西谷を気遣ってくれてるのはよく分かる。だけど、その優しさが逆に痛かった。これなら傷付けないよう避けられるよりも、西谷のように怒りをストレートにぶつけてくれる方が全然マシだ。
逃げるな、俺はお前の本音が聞きたいだけなんだ。
俺が慌てて旭を追いかけると、教室を出たところで思いもよらないヤツがいた。
「あれっ、菅原さん…?」
旭のでかい背中に隠れていた日向が、ヒョコリと顔を出す。その隣には影山までいる。
「日向、影山…!お前らこんなとこで何してんの!?」
「うすっ、コイツがどうしてもエースが見たいって言うんで…」
「ちょっ…影山…!そういう事言うなよっ…!!」
「あぁ!?ホントの事だろーが!」
どうやら旭はこの二人に引き止められていたらしい。賑やかな二人を前に、旭は困惑の表情を浮かべながら俺を見た。
「えっと…もしかして1年?」
「あぁ、この前入った日向と影山」
『ちわっす!』
「そうかぁ。ははは、元気そうじゃん。頑張れよ」
そう言って肩を叩かれた日向が目を丸くして言う。
「えっ…一緒に頑張らないんですかっ?」
「…!」
「あ、日向ーーー」
俺が止めるより早く、日向は続ける。
「俺エースになりたいから、本物のエース生で見たいです!!」
「………悪い。俺はエースじゃないよ」
「え?」
「ごめんな、進路指導呼ばれてるから行くわ。じゃあな」
そう言って旭は片手を上げ、いつもの優しい笑顔で去っていった。