第6章 エースの帰還
くそ、止められなかった……
拳を強く握る俺に、影山が不思議そうな顔で尋ねた。
「あの、よく分かんないんスけど…怪我とかで出られないってことですか?」
「いや、元気だよ、旭は」
「じゃあ何か、戻れない事情とかが?」
「外部的な要因があるとかじゃないんだ。アイツが、バレーを嫌いになっちゃったかもしれないのが問題なんだ」
「えええぇっ!?」
横から日向が素っ頓狂な声を上げる。
「なっ、なんで!?あんなに大っきくてエースって呼ばれてるのに…」
言いながら日向は、旭が去っていった廊下の向こうを見つめた。新入部員の1年を、俺達上級生のゴタゴタに巻き込むつもりはなかった。けど、ここまで来たら仕方がない。俺は日向と影山に、事情を説明することにした。