第5章 練習試合と邂逅
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試合を終えて、俺達は荷物を下げてバスに向かった。肩に大きなバッグを下げた清水の後を追って、田中が声をかける。
「潔子さん!お荷物、お持ちしますッ!」
「…大丈夫だから。田中はあっちのドリンク運んでくれる?」
「はいっ、了解しましたッ!!」
ビシっと敬礼して、田中はドリンクの詰まったケース2つと、それから着替えやタオルの詰まったでかいバッグを3つも抱えた。田中のヤツ、またスルーされてら…。清水に振り向いてほしくて頑張るのはいいけど、それが清水には逆効果なんだけどなぁ…。まぁ、いつものことだ。
その時、俺の前を歩いていた日向が突然立ち止った。
「あれ?みなみ先生は…?」
日向の一言で、その場の全員が足を止める。清水がきょろきょろと辺りを見回した。
「さっきまで一緒にいたんですけど…」
「忘れ物でもしたんじゃないスか?」
田中が抱えた荷物の横から顔を出す。その後ろから山口が言った。
「あ!そういえばさっき、青城の先生に呼ばれてました!」
アイツだ、と直感した。
「ありゃりゃ、何かあったかな…。じゃあ僕が呼んできますから、みんなは先にバスへーーー」
「俺が呼んできます!」
武田先生が言うより早く、俺は反射的に声を上げた。武田先生は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに眉毛を下げて申し訳なさそうな顔になる。
「あぁ、すみません…。じゃあ、菅原君にお願いしますね。手の空いてる人は荷物の積み込みを手伝ってください。終わったらバスで待機すること」
「悪い大地、俺の荷物バスに乗っけといて」
「お、おう」
俺はバッグを大地に放り投げて、いま来た道を駆け戻った。
…ホント、何やってんだろ。これじゃあ俺も田中とそんなに変わらないじゃないか。むしろ田中の方が相手にストレートな分、見ていて潔くさえ感じる。小さくため息をついて、俺はみなみさんの姿を探した。
体育館に続く渡り廊下まで来た時、話し声が聞こえた。見ると、扉の手前でみなみさんとそいつが何か話している。呼びかけようとした寸前そいつの低い声に遮られ、俺はタイミングを失った。そのまま無意識に植木の後ろに隠れる。
最悪だ…。