第5章 練習試合と邂逅
『整列ーっ!ありがとうございました!!』
挨拶を終えて、みんながベンチ周りに駆け寄ってきた。武田先生とみなみさんを囲む。未だ放心状態の武田先生に、俺はそっと耳打ちした。
「先生達、なんか講評とかお願いします」
「あっ、そっ、そうか…!」
「は、はいっ…!」
二人は慌てて立ち上がり、武田先生はずり落ちそうなメガネをかけ直して言った。
「えーと…僕はまだバレーボールに関して素人だけど、何かすごいことが起こってるんだってことは分かったよ。…バラバラだったらなんてことない一人と一人が出会うことで、化学反応を起こす…」
隣でみなみさんが緊張した面持ちで聞いている。反面、日向と影山は頭上にハテナマークを浮かべて顔を見合わせた。
「…そんな出会いが、ここで、烏野であったんだと思った。根拠なんかないけど、きっとこれから君らは強く、強くなるんだな…」
『………』
静まってしまったみんなに、武田先生は慌ててぶんぶん腕を振った。
「あぁっ!ごめんっ!!ちょっとポエミーだった!?引いたっ!!?今のは忘れてっ!!」
「いやいやいや、そんなことないです、ありがとうございますっ!!」
「じゃあ、野村先生もどーぞ!」
「あっ、えぇっ!?は、はいっ…!」
武田先生に促されて、みなみさんは半歩前に出る。
「えっと…私はこれまでスポーツなんて学校の授業でしかやって来なかったけど…今日のみんなの試合を見て、もっともっとバレーのことを知りたいって思いました。夏の公式戦では、今よりも強くなったみんなが見られることを楽しみにしています…!」
そこまで言って「ありきたりでスミマセン…」と恥ずかしそうに顔を伏せた。慌てて大地がフォローに入る。
「いやいやっ、全然大丈夫です!」
『アザァーッス!!』
「よしっ、撤収ーーー!!」