第5章 練習試合と邂逅
「…まぁ、あれだ」
頭を掻きながら前置きをして、誠人君は続ける。
「とにかく、元気そうで良かったよ。烏野に行ったってのは聞いてたけど、ずっと会ってなかったからさ。母校に何か用でもあったか?」
「あ、うん。今日、担当してる部活の練習試合で、それで…」
「もしかして…バレー部か…?」
「えっ、なんで分かったの…?」
「奇遇だな…実は俺もココのバレー部の副顧問してんだよ。練習中に選手が一人怪我してな、保健室から帰ってくるのを待ってたんだがーーー」
「藤宮センセー、お待たせしました〜」
その時、廊下の向こうからのんびりと間延びした声が飛んできた。誠人君は振り返って声の主を確認するなり、呆れ顔になる。
「ったく…待ちくたびれたから先に行くトコだったぞ。何してたんだよ、及川」
「いやぁ〜スミマセン。俺を心配した女の子達が、保健室に押しかけちゃって…」
「何バカなこと言ってんだ。せっかく練習試合で先方が来てくれてんのに…」
オイカワ、と呼ばれたその男の子は、誠人君よりも更に数センチ高い長身だった。見ると、足元をテーピングで丁寧に固定してある。
「ところで…」と、及川君は私に視線を移した。サラリと値踏みされるような目を向けられ、私は思わず一歩引いてしまう。
「ソッチの人は?もしかして先生のカノジョとか?」
「ば、バカっ、違うよ…!」
「なぁーんだ、随分嬉しそうに話してたから絶対そうだと思ったんですケド」
「ただの後輩だ、大学の時の。烏野高校バレー部の先生で、野村みなみ先生。今日の試合の引率に来たそうだ」
「ナルホド。俺は青城バレー部のキャプテンしてます、及川でーす」
そう言って、及川君はにこりと品良く笑い、私に手を差し出した。私もつられて握手する。
「よ、よろしくお願いします」
「コチラこそ〜」