第5章 練習試合と邂逅
握ったその手を離したとき、思いついたように及川君が「…あ!」と声を上げた。
「どっかで聞いた名前だと思ったら…もしかして、この絵を描いた人ですか?」
そう言って、壁にかかった私の絵を指差した。
「そうだけど…、どうして知ってるの?」
「そこに名前が書いてあるんで」
額縁の右下に、出品したコンクールと私の名前が書かれた小さな札が添えられている。
「私の名前…、こんな小さくしか出てないのによく気付いたね」
「ふふーん。周りをよく見てる、ってしょっちゅう言われま…イテッ…!」
得意げに腕組みをした及川君の頭を小突いて、誠人君が言った。
「及川、自画自賛はやめろ、みっともない…。よし、じゃあそろそろ行くぞ。みなみ…野村先生もどーせ向かうところだったんだろ?一緒に行こう」
「う、うん…!」
及川君もしぶしぶ返事をして、私達三人は第三体育館へ向かった。