第4章 それぞれの帰り道
「ありがと。生徒に励まされちゃうなんて、教師なのに情けないね」
「そんなことねーべよ。ちゃんと頑張ってるじゃん。むしろ頑張り過ぎて身体壊さないか心配だべ」
「大丈夫」そう言って彼女は笑った。
「もし本当につらい時は、孝支君にまた相談するから」
「ん、俺で良ければ」
彼女がいつものようにふわりと笑ったので、俺は安心した。少しくらいは力になれたんだろうか。
そしてみなみさんは深呼吸をして言った。
「私、決めた。もう少しだけお母さんを応援しようと思う。お母さんが惹かれる人だもの、きっと素敵な人なんだと思う。複雑な気持ちも本当だけど、自分のことを大切にしてほしい気持ちも嘘じゃないもの」
「そっか」俺は言う。
「おばさんの相手、良い人だったらいーな」
「ん…」
「大丈夫だべ。もしとんでもない奴だったら、代わりに俺がぶっ飛ばしてやるから!」
ふにゃりとした顔で彼女が笑った。
「ふふ、孝支君に話したら少し気が楽になったかも。これからはもっとシッカリするね」
「そんな気にすんなって。今だって充分、日向とか田中に好かれてんだからさ、みなみさんはそのままで大丈夫だべ」
「ふふ、そりゃあ慕ってくれてるかもしれないけど…」
後れ毛を耳にかけながら彼女が言う。
「でも、私なんかより孝支君の方が頼りにされてるわよ。今日も日向君達にアドバイスしたり、試合の後で月島君に声かけたりしてたでしょ?そんな風に、周りをよく見て、誰かをサポート出来るって、本当に凄いと思う。思いやりのある人じゃないと出来ないことだわ」