第3章 3vs3
不意に、ジャージの裾を引っ張られた。気付いて横を見ると、みなみさんが心配そうにこちらを見上げている。
「菅原君、大丈夫…?」
「あぁっ、ごめん、考え事してて…!」
俺は慌ててごまかし、コートに向き直る。
その後はぎこちないながらも日向と影山の連携プレーが決まるようになった。月島チームにリードされていた1セット目は途中で逆転勝利し、2セット目もその流れは途切れなかった。
『ピピーーーッ!』
試合終了の笛が鳴る。
2セット目
影山・日向 25
月島・山口 21
「す、すごい…!勝っちゃった…!!」
試合終了後、興奮気味にみなみさんが言う。口元に両手を当てて、俺を見上げた。
「アイツらに先生から何か声かけてやってよ」
「うん…!」
彼女が嬉しそうに日向と影山のもとへ駆けていく。彼女に労いの言葉をかけられた日向は、嬉しそうに目をキラキラと輝かせている。一方、俺はすぐそばにドサリと腰を下ろした月島と、その横にへたり込んだ山口に声をかけた。
「お疲れー。月島も山口も健闘してたじゃん。ナイスファイト!」
「あ、ありがとうございます…」
「…最初から分かってたことじゃないですか。ボクら庶民が王様に勝てるわけないですから」
そう言ってプイ、と月島は顔を背けてしまった。そんな友人の言動を気まずく思ったのか、慌てた山口が俺と月島の顔を交互に見て、申し訳なさそうに眉を下げる。
クールな言動とは裏腹に、月島の全身を汗が伝っている。月島はメガネを外して次々と吹き出る汗を拭い、喉を鳴らしてペットボトルの水を飲んだ。全くどこまで天邪鬼(アマノジャク)なんだよ、と、俺は心の中で苦笑した。コイツもコイツで、自分なりにバレーと向き合っているんだろう。そうじゃなきゃ、こんな悔しそうな目でコートを見つめたりはしないはずだ。
「はは、でも案外熱くなってたじゃん!いいと思うよ、そーゆーのっ!」
「……別に。」
そう言って月島は口を尖らせてそっぽを向く。
その時、日向と影山が揃って声を上げた。